(台湾の)茶の歴史

林佩欣

 茶は代表的な台湾の経済作物の一つであり、その種類と風味の多様性が際立っている。発酵の程度に応じて、不発酵の緑茶、半発酵の烏龍茶、そして完全発酵の紅茶に大別される。また、茶葉の品種や産地の風土に基づき、包種茶、凍頂烏龍茶、鉄観音、東方美人、碧螺春など、地域色豊かな銘茶が発展してきた。

台湾での本格的な茶の栽培は、清代以降、漢人の移住と開拓に伴って北部の山間地に広がった。1860年代、台湾で通商港が開放されたのを契機に、イギリス人商人ジョン・ドッド(John Dodd)が福建省安渓から茶の苗を導入し、「海山堡」(現、新北市西南部)や「文山堡」(現、台北市南部)地域で茶葉栽培を奨励した。彼が台北の大稲埕で茶葉を精製・包装し「Formosa Tea」としてアメリカ市場に輸出したことで、台湾烏龍茶の国際的評価の礎が築かれた。

日本統治時代には、台湾総督府が台南の安平に茶業試験場を設置し、紅茶の研究と商品化を進めた。1909年には三井合名会社が台湾に進出し、海山および苗栗地域に製茶工場を建設し、1927年に「三井紅茶」の名で販売を開始した。さらにブランド名を「日東紅茶」へと改称し、リプトンなど欧米の紅茶ブランドに対抗して国際市場への参入を目指した。

戦後、国際市場での競争が激化するなか、台湾の紅茶輸出は次第に縮小し、茶業の重心は輸出から内需へと移行した。特に、中国大陸から移住した外省人の茶文化に対応して烏龍茶と緑茶が国内市場の主流を占めるようになった。

現在、台湾の主要な茶の産地には、新北市三峡区・坪林区、台北市文山区、南投県鹿谷郷・魚池郷、嘉義県阿里山郷、新竹県新埔郷などが挙げられる。これらの地域では、豊かな自然環境と地域に根差した技術に支えられた高品質な茶葉が生産され、台湾茶の文化的・経済的価値を今に伝えている。

三峡の茶園(林佩欣氏提供)

茶摘み(林佩欣氏提供)

もっと知りたい方のために

・林品君『台湾茶の教科書 現地のエキスパートが教える本場の知識』グラフィック社、2025年
・莊淑姿「流動的珍珠奶茶:臺灣手搖飲發展之解構與分析」『中國飲食文化』第21巻第1号、2025年、pp.169-213
・國立臺北大學海山學研究中心編『三峽茶鄉觀光護照2.0』新北:國立臺北大學海山學研究中心、2024年
・テレビドラマ「茶金 ゴールドリーフ」