中華民国
1911年の辛亥革命によって清朝が倒れ、1912年に誕生した国家。革命の指導者だった孫文を「国父」とする。建国初期の混乱を経て、1928年に中国国民党の蔣介石が率いる、南京を拠点とする勢力が全国を統一する。1930年代からの日中戦争を経て、1947年に中華民国憲法が施行された。その後、中国共産党との内戦に敗れた中国国民党は、台湾に逃走するも中華民国政府を名乗り続け、1949年に北京を首都として建国された中華人民共和国ではなく自身こそが正統の中国政府だと国際社会に訴えた。
中国国民党政権は台湾で一党支配を行い、反政府勢力を厳しく抑圧する政策をとる。1970年代以降、一党支配への反対運動が盛り上がり、国民党政権は1990年代に憲法を改正し、総統(大統領)や立法委員(国会議員)を直接選挙で選ぶ政治体制に移行した。これを受けて1996年には李登輝が最初の民選総統に当選、この年は台湾民主化の完成した年とされる。
この政治変動により、中華民国の政治体制は「台湾化」し、中国政府としての建前は大きく崩れたとされる。ただし、中華民国という国号は現在も維持され、公文書などでは1912年を元年とする「中華民国暦」が今も使われる。台湾で、例えば2025年が「114年」と表記されているのを目にするのはこのためである。
中華人民共和国は、国際社会が「中華民国」あるいは「台湾」を国家として扱うことに強く反対している。その結果、台湾がオリンピックなどのスポーツの国際大会に参加する際は中華民国や台湾ではなく「チャイニーズ・タイペイ」(中華台北)を名乗り、中華民国の国旗や国歌も使用しないという措置が取られている。国際的な活動に堂々と参加させてもらえないことは、台湾の人々にとって大きな不満であり、その対処は台湾の政治家にとって大きな課題となっている。
もっと知りたい方のために
・松田康博「台湾とは何か(台湾修学旅行アカデミー第1回)」『SNET台湾』YouTubeチャンネル
・家永真幸『台湾のアイデンティティ 「中国」との相克の戦後史 』文藝春秋、2023年
