蔡英文(さい えいぶん)
(1956年8月31日-)
第7代中華民国総統(第14期、15期)(2016年-2024年)。台湾初の女性総統。父方に台湾先住民パイワン族と客家の、母方に河洛人(福建系漢人)のルーツを持ち、政治とは無縁の家庭に育つ。国立台湾大学法学部を卒業した後、米国コーネル大学法学修士を取得、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスで法学を主専攻、国際貿易を副専攻として法学博士号を取得した。台湾に戻って大学教員となったが、台湾のWTO 加盟交渉時に経済部(日本の経済産業省に相当)の首席法律顧問を務めたことから中台関係の政策に携わる行政院大陸委員会の主任委員など政府内の要職を歴任。1999年に当時の総統、李登輝が発表した中台関係の定義「二国論(特殊な国と国との関係)」にも関わったと言われる。
2004年に民主進歩党(以下、民進党)に入党し、2005年立法委員(国会議員)選挙で比例初当選、2006年1月から翌年5月まで行政院副院長(副首相に相当)を務める。2008年民進党が総統選挙で敗北後、第12 代党主席に就任、党の立て直しを図る。2010年の新北市長選、2012年総統選のいずれも敗北するが、その後2016年、2020年の総統選で対立候補に大差をつけて当選する。
2期8年の業績で特筆すべきものは、2016年の先住民への国家元首としての公式謝罪、2019年のアジア初の同性婚法案可決である。またITを駆使した適切な新型コロナ対策は世界中から注目を浴びた。外交では米国との関係強化に努め、中国には終始慎重な姿勢で対応した。2024年の総統選では、二期目でも異例の好調な支持率を示していた蔡路線の継承を訴えたことで民進党の頼清徳が当選、民選総統選挙史上初めて三期連続で民進党が政権を担う原動力になった。
もっと知りたい方のために
・蔡英文著、劉永毅構成、前原志保翻訳『蔡英文自伝:台湾初の女性総統が歩んだ道』白水社、2017年