國立台灣大學 国立台湾大学

百年の「知」とランドスケープの形成の足跡をたどる

顔杏如撮影

国立台湾大学は台湾屈指の名門大学です。その前身は1928年に七番目の帝国大学として 設立された台北帝国大学です。メインキャンパスは旧台北高等農林学校を基として拡張 されてきました。設立当初は文政学部、理農学部があり、終戦までには五つの学部とい くつかの専門部、研究所が設立されました。第二次世界大戦後の1945年に国立台湾大学 に改名し、教育と研究を兼ねた総合大学として現在に至ります。メインキャンパスは台 北市内にありますが、台湾各地に分布する実験林や農場などを入れると、総面積は3万4 千ヘクタールで、台湾の総面積の約1%を占めています。

学びのポイント

知と熱帯への想像

日本統治時代以来の正門を通り抜けると、両側に西洋式の古典建築と大王椰子が佇んで います。これらの建物は、帝大建設当初に建てられました。ローマやルネサンス時期の 建築のエレメントと飾りが見られ、構内には中庭があります。このような建築様式を採 用したのは、二十世紀初期欧米と共通した「大学」への想像、また、理性、秩序などの 理念を表すためです。その一方で、亜熱帯の台北なのに、大王椰子などの熱帯植物が植 えられ、南国のイメージを強く表しています。正門の右側の細い道に沿って歩くと「傅 園」に着きます。ギリシャ風の白いパルテノン神殿のような建物の下には、戦後の1949 年に学長の任にあった傅斯年先生が眠っています。「傅園」は帝大時代には熱帯植物園 でした。これらの建築と植物は台湾大学のランドスケープを構成しています。戦前から 戦後までの変化を考えながら歩いてみましょう。

人類学博物館

台湾人のための帝国大学?

台北帝大は台湾人に歓迎されない中で設立されました。植民地統治下の台湾人は、日本 人しか進学できない大学ではなく、より多くの台湾人が通える初等中等学校を求めてい ました。実際、台北帝大は、主に日本人の進学先であり、地域特性を備えた熱帯研究を 進め、南進基地の役割も果たしました。設立初期には「土俗人種学」「南洋史」「熱帯 農業」などの講座があり、戦争中には「熱帯医学」「南方人文」「南方資源」などの研 究所が設立されました。現在まで数多くの学術標本、文物が収集されており、人類学博 物館、植物標本館などでは、帝大時期からのコレクションを展示しています。また、「 蓬莱米」の父と呼ばれた磯永吉とゆかりのある「旧高等農林学校作業室」もオープンし ています。元図書館の校史館からスタートして、知の生成の足跡とその背後にある権力 との関係をたどってみましょう。

「移行期正義」と大学

「傅鐘」は台湾大学のシンボルの一つです。「傅」は傅斯年学長のことです。この鐘は 「一日は21時間であり、残りの3時間は考える時間だ」という彼の名言に基づいて、授 業ごとに21回の鐘の音が響き、自由主義の精神をも象徴します。白色テロの発端と目さ れている1949年の「四六事件」という学生逮捕事件に際して、彼の非暴力的な主張も常 に称賛されてきました。しかし、近年、関係者の回顧録やオーラルヒストリー(関係者 からの聞き取り)により、彼が政府当局と協力していた面もあったことが発見されまし た。これを踏まえて、キャンパス内での政治受難事件、ランドスケープ、校史の記載な どについて、歴史的な調査を通して再検証すべきだという主張が学生側から提起されて います。このようなプロセスを通して大学は、個人崇拝ではなく、「人間」の複雑な面 に迫り、また、被害者の記念のみならず、加害のメカニズムをも解明する「移行期正義 」の実践に乗り出すことが可能になるでしょう。

傅鐘と大王椰子

さらに学びを深めよう

  1. 【事前学習】【事後学習】移川子之蔵、工藤祐舜、磯永吉はいずれも台北帝国大学の 教授でした。彼らはどんな研究をしていたのか調べてみましょう。
  2. 【事前学習】【事後学習】「移行期正義」とは何かを調べてみましょう。
  3. 【現地体験学習】【事後学習】校門から図書館までを繋ぐ大王椰子通りに植えられて いる椰子の木の数は何本でしょうか、数えてみましょう。

参考資料

台湾大学の歴史について、 校史館の日本語ガイド が参考になります。近代日本が植民地に設立した大学全般について、専門的ですが、酒井哲哉、松田利彦『 帝国日本と植民地大学』(ゆまに書房、2014年)があります。植民地での稲の品種改良 について、やや専門的ですが、藤原辰史『稲の大東亜共栄圏――帝国日本の〈緑の革命 〉』(吉川弘文館、2012年)があります。

(顔杏如)

ウェブサイト
公式https://www.ntu.edu.tw 台北旅遊網(台北市政府観光伝播局)https://www.travel.taipei/ja/attraction/details/914
所在地
台北市羅斯福路四段一号
特記事項
博物館の ガイドの予約(中国語と英語。日本語ガイドは校史館のみ)