・若林正丈『蔣経国と李登輝 「大陸国家」からの離陸?』岩波書店、1997年
・五十嵐隆幸『大陸反攻と台湾 中華民国による統一の構想と挫折』名古屋大学出版会、2021年
蔣経国(しょう けいこく)
(1910年4月27日~1988年1月13日)
第6・7期中華民国総統(1978-1988年在任)。浙江省生まれ。蔣介石の長男。ソ連留学後(1925-1937年)、中国国民党で働き、1940年代末には中国共産党との内戦に敗れた蔣介石とともに台湾へ撤退する。台湾では「特務」と呼ばれる治安部門を任され、反政府勢力に対する暴力をともなう摘発に携わることで自身の権力を拡大させた。1972年に行政院長に就任し、インフラ整備のための大規模な国家投資計画(十大建設)を進め、台湾の経済成長に貢献する。国民党政権維持のために台湾出身者を積極的に取り込み、後に総統となる李登輝もこのとき抜擢された。78年に総統就任後、外交面では米中国交樹立(1979年)に伴うアメリカとの断交という危機に、内政面では反国民党運動の盛り上がりに直面する。最晩年の86年には民主進歩党の結党を黙認、87年には38年間続いた戒厳令を解除、中国大陸への親族訪問解禁、88年には新聞の新規発行解禁などの改革を断行した。社会を抑圧した側面と、開明的な側面に対し、台湾社会の賛否は大きく割れる。

蔣経国像(家永真幸氏提供)
