洪郁如撮影
奇美博物館
奇美博物館
個人コレクションをもとにした私立総合博物館で、楽器や武器の展示に特色
奇美博物館は、奇美実業という企業を創業した許文龍が設立した私立総合博物館です。西洋の宮殿を模した壮麗な建築が目を引き、写真撮影スポットとしても多くの観光客が集まります。西洋美術、自然史、楽器、武器という四つの分野に特色がある常設展示のほか、時期に応じて企画展示が行われます。この一帯はもともとサトウキビ農場でしたが、製糖業の衰退により博物館が建てられました。近くの旧製糖工場も現在は「十鼓仁糖文創園区」という観光地になっています。最寄り駅である台湾鉄道の保安駅では、日本統治時代に建てられた駅舎が現在も使われています(奇美博物館から徒歩約10分)。
学びのポイント
どのような博物館ですか?
奇美博物館は、奇美実業グループの創業者・許文龍によって設立されました。奇美実業は1959年に創業され、ABS樹脂というプラスチック素材の生産で世界的な企業に成長しました。現在では化学工業、電気機器製造業などを含む多角的な企業グループとして知られています。奇美博物館は1992年当初、許文龍の個人コレクションを展示するため、奇美実業の工場敷地内に設立されました。その後、台南県政府(現在は台南市政府)の協力で現在地に移転、2015年に現在の建物が開館しました。
創立者はどのような人ですか?
奇美博物館の創立者・許文龍は、日本統治時代の1928年に台南で生まれました。少年時代、台南市内にあった台南州立教育博物館によく通っていたと語っています。そうした自身の経験から、一般大衆向けに博物館を建てたいという願いを抱いていたそうです。企業家として成功しましたが、芸術の愛好家でもあり、私費を投じて芸術作品の収集を進めていました。ヴァイオリンを弾くほか、日本統治時代に活躍した人物の胸像を自ら作って寄贈していることでも知られています。
展示にはどのような特色がありますか?
西洋美術の展示としては、一階のロダン・ホールでロダンの「考える人」を様々な角度から見ることができます。また、二階の常設展示では13~20世紀の絵画や彫刻のコレクションを鑑賞できます。一階の動物ホールに展示されている動物の剥製や化石からは、生命進化の多様な姿が垣間見えます。奇美博物館の展示には他の博物館ではなかなか見られない特色が二つあります。第一に、武器です。ヨーロッパと非ヨーロッパの二つのエリアに分けて、その製作技術や文化的特徴などが紹介されています。第二に、楽器です。ヴァイオリンのコレクションが充実しているほか、自動演奏楽器や世界各地の民族楽器などの珍しい展示があります。
さらに学びを深めよう
- 【事前学習】【事後学習】奇美博物館には近代西洋美術、自然史、武器、楽器という四つのテーマの展示があります。興味のある分野について調べましょう。
- 【事前学習】【事後学習】ビッグ・コレクターと呼ばれる収蔵家の個人コレクションをもとに造られた日本および世界の博物館・美術館について調べてみましょう。
- 【事前学習】【事後学習】許文龍氏が創業した奇美実業について調べてみましょう。
参考資料
公式ホームページの日本語版を見ると、奇美博物館の概要を知ることができます。創立者の許文龍氏は日本統治時代に活躍した人物の胸像を自ら作っていたことでも知られていますが、そのことについては『日本人、台湾を拓く─許文龍氏と胸像の物語』(まどか出版、2013年)で述べられています。ビッグ・コレクターの個人コレクションをもとに造られた美術館については、月刊誌『Artcollectors』(No.93、2016年11月)が「13人のビッグ・コレクターが作った13の美術館と7つのコーポレート・アート美術館」という特集を組んでいます。
- 所在地
- 台南市仁徳区文華路二段66号