司法博物館の外観(鳳気至純平撮影)

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司法博物館

司法博物館

築110年以上の建物で法律を通じて台湾の過去と現在を学ぶ

司法博物館は、司法関係資料の収集、保存、展示を目的として2016年に開館しました。建物の前身は、1914年落成の台南地方法院(裁判所)で、日本植民地時代における三大建築の一つ(他二つは台北の台湾総督府〔現在の総統府〕と総督府博物館〔現在の国立台湾博物館〕)とされます。戦後も2001年の移転まで、台南地方法院として利用されました。1997年に国の指定古蹟に登録され、司法博物館としてリノベーションされました。日本植民地時代における漢人系住民による最後の武装抗日事件「タパニー事件(西来庵事件、余清芳事件)」の審理が行われた場所でもあり、台湾の法律の過去、現在を学べるだけでなく、その建物自体も台湾史の一部となっています。

学びのポイント

建物の特色は?

前身の台南地方法院は、台湾総督府の設計者でもある森山松之助の設計で、1911年から工事が始まり、1914年に完成しました。台北の台湾総督府のように、外観は統治の権威を強調するものになっていますが、大きな特徴は、他の日本植民地時代の庁舎と違って、左右が非対称の構造になっていることです。回廊で結ばれた左右の塔に出入口がありますが、一説では日本人用と台湾人用に分かれていたと言われています。上部の屋根の補修等の際に使われた作業用通路である「猫道(キャットウォーク)」が、ガイドツアーの目玉になっています。右側の塔は、戦後倒壊のおそれがあって撤去され、設計図が散逸したため、現在も修復されていません。天井に逆向きに設置された塔のミニチュア模型が鏡張りの床に投影され、上から塔を俯瞰できます。

ガイドツアーの目玉の「猫道」(鳳気至純平撮影)


鏡張りの床に投影された塔のミニチュア模型(鳳気至純平撮影)

展示で知る台湾の歴史、現在

常設展では、建物の歴史を知る展示を見学するだけでなく、審理を待つ被疑者を収監する拘置所や実際に使われていた法廷の中に入ったり、法服を着て裁判官気分で写真撮影をしたりすることもできます。戦前から戦後にかけての判決書類が書架に陳列されている資料室は圧巻です。常設展のほか、台湾の歴史や法律を紹介する特別展も不定期で開催されています。例えば、2024年タパニー事件の特別展では、VR技術によって事件当事者の立場から事件の過程を体験できました。また戦後の台湾法制の変遷をたどる展示は、台湾法制が民主化運動と共に変遷してきたことがよくわかる構成になっていました。司法博物館ウェブサイトの「特展影片」のページには、過去の特別展の紹介動画がアーカイブされており、その内容を知ることができます。
さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】設計者の森山松之助の師匠は、東京駅を設計した辰野金吾です。森山や辰野について調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】司法博物館の近くにある台湾文学館も、日本統治期の台南の代表的建築物です。二つの建物の特徴などを観察してみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】日本にも、司法・法律の知識を学べる博物館などの施設がないか調べてみましょう。
参考資料
審理が行われたタパニー事件に関するタパニー事件紀念園区はみんなの台湾修学旅行ナビで紹介されています。少し専門的ですが、日本と台湾の法の異同については、蔡秀卿、王泰升『台湾法入門』(法律文化社、2016年)があります。

(鳳気至純平)

ウェブサイト
公式 https://tnd1.judicial.gov.tw/HS/ <p cla
台南旅遊網 https://www.twtainan.net/zh-tw/attractions/detail/680/

(中国語)

所在地
台南市中西区府前路一段307号

特記事項
「猫道」見学ができるガイドツアーは、1日2回(10:00、15:00)、毎回10人、当日予約。