旧打狗駅故事館は、その名の通り、もとの打狗駅を博物館として使用しています。打狗は高雄の古い呼び方で、この地に住んでいた先住民が呼んでいた地名の「Takau」(竹林を意味します)に台湾人が漢字を当てはめたものです。日本統治時代の1920年に高雄に改称されました。
現在の高雄駅は、旧打狗駅故事館よりかなり離れた内陸側にありますが、これは現・高雄駅が1941年に新たに設けられた「新・高雄駅」だったためです。高雄駅では現在、地下化とそれに付帯する工事が進んでいますが、かつて建設された駅舎が今も保存されています。
旧打狗駅は、1900年から1908年までは打狗停車場、1920年までは打狗駅、1941年までは高雄駅という名称でした。同年からは新たに高雄港駅に改称され、2008年に現・高雄駅地下化工事の影響などによって廃止されるまで、主に貨物列車の駅として利用されました。旧打狗駅は、高雄で最も古い歴史を持つ駅なのです。
松葉隼撮影
旧打狗駅故事館は、最近まで「高雄港駅」であったことからもわかるように、港に近く、現在は高雄捷運(メトロ)の西子湾駅の目の前にあります。打狗(高雄)駅として活躍していた時代、この駅は北部の台北や基隆とを結ぶ縦貫線の終点で、台湾島内でも最も重要な駅の一つでした。港に近い駅であったことから、鉄道で高雄まで来た人が船に乗り替えたり、運んできた物資を船に載せ替えたりする拠点として利用され、現在まで続く貿易港・高雄を支えていました。
2008年に鉄道の駅としての役目を終え、2010年に博物館に生まれ変わりました。しかし、2017年には、この地に高雄軽軌(ライトレール)の「哈瑪星駅」が設置され、駅として復活することになりました。
哈瑪星は台湾語で「ハマセン」と発音しますが、これは日本語の「浜線」に由来します。かつてここには、高雄港駅と高雄駅などを結ぶ貨物線・高雄臨港線(通称、浜線)があり、「浜線」がいつしか「哈瑪星」になりました。それだけ、この地域と鉄道は深い関係にあります。2021年には、この浜線があった場所にライトレールの路線が延長されました。こうして、浜線と高雄の歴史は未来へと続いていくことになったのです。
廣田琢也提供
旧打狗駅故事館は、かつて高雄港駅として利用されていた駅舎を活用し、新旧高雄駅や浜線の歴史、貨物駅としての役割を紹介しているほか、現役時代に使われていた貴重な鉄道用品を展示しています。駅舎だけでなく、信号機やポイントを管理していた信号所の建物や、貨物列車などを停車させておくヤード(操車場)も保存され、広大な空間を公園のように利用しています。休日には多くの市民が訪れ、凧揚げやシャボン玉などをして遊ぶ様子が見られます。駅舎の横には、台湾鉄道などで活躍していた機関車や客車、貨車なども展示されています。また、哈瑪星エリアには、埠頭側に「駁二(ボーアール)芸術特区」が設けられ、倉庫をリノベーションしたカフェやショップなど、おしゃれな店が多数あります。また、「哈瑪星台湾鉄道館」には台湾の風景を再現した鉄道のジオラマが展示されており、高雄と鉄道の繋がりの深さを感じることができます。
廣田琢也提供
廣田琢也提供