松葉隼撮影
松葉隼撮影
國立臺灣博物館 鐵道部園區
国立台湾博物館 鉄道部園区
「モダン」を運んだ歴史の証言者
国立台湾博物館には、本館以外にも、古生物館、南門館、北門館(鉄道部園区)と多様な展示スポットがあります。古生物館、南門館、鉄道部園区はいずれも台湾の経済を支えた場所を再利用したという共通点があります。鉄道部園区はもともと、清朝時代には台北機器局(兵器・鉄道工場)、日本統治時代には台湾総督府鉄道部庁舎と鉄道工場があった場所です。現在博物館としてメインで利用されている建物は、日本統治時代の1920年に完成し、戦後は鉄道管理局として利用されてきました。台北駅が建て替えられ、鉄道管理局に移転したあと長い時間をかけて修復され、2020年から台湾博物館の分館、北門館(鉄道部園区)として公開されました。
学びのポイント
「北門」は新しい台湾の出発点
国立台湾博物館鉄道部園区は、台北駅の西側、台北メトロ北門駅のすぐ近くにあります。現在はさらに桃園メトロの台北駅が道路を隔てた向かい側にあり、交差点を挟んだ反対側には、「北門」(承恩門)や台北郵便局があります。北門とは、かつて台北の街を取り囲んでいた城壁の正門で、清朝時代から現在まで保存されています。つまりこの地域は昔から台北の「入り口」だったのです。北門の周囲には、清朝時代から鉄道駅、機械工場、郵便局(現・台北郵便局)など新しい時代を象徴するさまざまな施設が造られ、日本統治時代、そして戦後へと引き継がれていきました。北門はかつて台湾の近代化の出発地点であり、北門館は百年にわたって時代の変化を見つめてきました。
「時代」を動かした鉄道と台湾
鉄道は世界を大きく変えましたが、台湾も鉄道によって大きく変わりました。鉄道に乗って多くの人々がいろいろな場所へ出かけ、様々な物が台湾から世界へと、世界から台湾へとやって来ました。鉄道は世界を、人と人との距離を縮めていきました。台湾では、大陸と比較してもかなり早い段階で鉄道が建設されます。清朝で台湾を担当した知事であった劉銘伝は、洋務運動の一環として、北部の基隆から南部の打狗(高雄)まで台湾を縦断する鉄道を計画し、基隆から台北、その後新竹までを結びました。日本統治時代の1908年にこの南北を結ぶ鉄道が完成し、台湾の人々も徐々に鉄道を利用するようになります。この時代に台湾の鉄道を建設、運営した部門が台湾総督府鉄道部です。現在博物館となっている鉄道部の建物は1920年に完成し、戦後も台湾の鉄道を管理するための施設でした。その中で、100年にわたってたくさんの人々が台湾鉄道の未来を計画し、実行にむけて働いていました。
百年の歴史を物語る貴重な歴史建築
国立台湾博物館鉄道部園区の最大の魅力は完成から100年を経た建築物で、3年という時間をかけて修復、公開されました。2007年には国定古蹟に指定されています。メインの庁舎は1階がレンガ造り、2階が木造で、主要な柱や梁にはすべて台湾南部の阿里山で伐採された台湾檜が使われています。外観はハーフティンバー様式でまとめられています。 設計者の森山松之助は、東京帝国大学工科大学建築学科で、東京駅の設計者として知られる辰野金吾のもとで学び、1906年から1921年まで台湾で働きました。彼はほかにも台北州庁(現・監察院)や台中州庁(現・台中市政府)、台南州庁(現・国立台湾文学館)も設計しました。東京駅の駅舎や台湾の総統府はこれらの建物とほぼ同じ時期に造られましたが、どれも赤レンガと白い飾り石が目立つ美しい建築です。台湾博物館鉄道部園区には、鉄道部、鉄路管理局の庁舎だけでなく、八角楼(男子トイレ)、食堂、 防空壕などが残されており、いずれも貴重な遺構です。この場所には清朝時代に、兵器や鉄道車両を製造、修理する工場があり、日本統治時代には1930年代まで鉄道工場がありました。園区内にはこれら工場の遺構も残されており、三つの時代にまたがって引き継がれてきた貴重な歴史的遺産を間近で見ることができます。
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歴史建築で学ぶ鉄道、交通の歴史
国立台湾博物館鉄道部園区では2025年まで、鉄道に関連する常設展示が行われています。台湾の歴史や地理を大きく変えることになった鉄道の歴史を、鉄道のはたした役割、日常生活との関わり、鉄道システム、鉄道にまつわる記憶といった角度から紹介しています。これらの展示では、鉄道は人々や貨物を運ぶだけでなく、時間や世界にかかわる人々の概念を変化させ、新しい社会を作り出す役割を担ったことが紹介されます。また、歴史的なことだけでなく、駅やトンネル、橋などの鉄道設備、鉄道の安全運行に欠かせない信号や保安装置のしくみも紹介しています。子どもから大人まで楽しめる、以前の台北駅周辺を再現した鉄道模型レイアウトも大きな目玉です。さらには、2014〜16年に行われた建物の復元過程も詳しく紹介されています。この場所の歴史や復元の様子を模型やアニメーションで学ぶだけでなく、建物のさまざまな場所に残された彫刻を間近で見ることが出来ます。また、デジタル技術を駆使した斬新な展示が、見学するひとびとを百年前の世界へといざなってくれます。
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さらに学びを深めよう
- 【事前学習】【事後学習】1908年に開通した台湾縦貫鉄道について調べてみましょう。
- 【現地体験学習】館内に設置されたジオラマを見て、現在の地図と比較してみましょう。
- 【現地体験学習】展示されている台湾の駅弁を見て、日本の駅弁との共通
参考資料
台湾の鉄道については、多くのガイドブックなどで紹介されています。『台湾鉄道パーフェクト : 懐かしくも新鮮な麗しの台湾鉄道』(交通新聞社、2014年)、片倉佳史『台湾鉄道の旅 : 全線全駅路線図付き車窓ガイド』(JTBパブリッシング、2011年)など。やや専門的な書籍としては、小牟田哲彦『大日本帝国の海外鉄道』(東京堂出版、 2015年)、 高橋泰隆『日本植民地鉄道史論 : 台湾、朝鮮、満州、華北、華中鉄道の経営史的研究』(日本経済評論社、1995年)などがあります。森山松之助については、丸山雅子監修『日本近代建築家列伝 : 生き続ける建築』(鹿島出版会、2017年)に紹介されています。櫻井寛監修、はやせ淳作画『駅弁ひとり旅 ザ・ワールド 台湾+沖縄編』(双葉社、2013年)というマンガで、台湾各地の名物駅弁が紹介されています。映像を通して理解するには、第1回 国立台湾博物館SNET台湾チャンネル「おうちで楽しもう台湾の博物館」がおすすめです。松葉隼氏講演「台湾鉄道から見た帝国日本・植民地」では、帝国日本はなぜ台湾に鉄道を作ったのか?について深く楽しく語っています。
- 所在地
- 台北市大同区延平北路一段2号