台灣基督長老教會義光教會

美麗島事件とは、1979年12月10日、世界人権デーに合わせて、南部の高雄市で民主化を訴える雑誌『美麗島』の関係者が主催したデモが警官隊と衝突した事件です。発生場所の名前から高雄事件とも呼ばれます。デモの主催者らを中心に多くの逮捕者をだしましたが、この人たちが後の民主進歩党の中心を担うことになります。
宜蘭県出身で台湾省議員だった林義雄弁護士も、この事件に関わったとして逮捕投獄されます。彼はその後、社会運動を支援するため、1991年に慈林教育基金会を設置し、1993年には慈林紀念館を開館しました。1998〜2000年には民主進歩党の主席も務めるなど、政界でも活躍しています。

美麗島事件から数か月後の1980年2月28日、林義雄の自宅に何者かが忍び込み、母親と双子の娘が刺殺され、長女も大怪我を負う事件が起こりました。当時、林義雄は逮捕されており、その自宅は24時間の監視下にあったにもかかわらず目撃情報の一つもなく、犯人は未だに捕まっていません。
事件が、2月28日という二二八事件を想起させる日に起こったことは、市民に大きな衝撃をあたえました。また、政府に反発することで、本人だけでなく家族も被害を受けるかもしれないという恐怖を市民に抱かせました。このような民主化運動の指導者の家族を狙ったと見られる事件は他にもあります。例えば陳水扁元総統の妻、呉淑珍も1985年に白色テロと見られる交通事故で半身不随になり、今も車椅子生活を送っています。

林家のピアノ（藤野陽平提供）

事件後、林家は自宅を売却しようとしましたが、林家に協力すると政府に睨まれかねないと思われたのか、買い手がつきませんでした。そこで台湾基督長老教会が買い取り、1982年のイースターに当たる4月11日に義光教会となりました。林義雄はキリスト教徒ではありませんが（家族は後に長老教会に入信しています）、長老教会は民主化運動に積極的で、美麗島事件に関係した総幹事高俊明が逮捕されるなど、当時党外と呼ばれた民主化運動のグループと良好な関係にありました。
現在は、礼拝などの行事をしている時を除けば教会を参観でき、かつて民主主義や人権のために命懸けで活動した人たちに思いを馳せることができる場所となっています。事件があった2月28日には毎年追悼礼拝が行われ、多くの人々が祈りを捧げます。

教会内部（藤野陽平提供）