古都鹿港で存在感を示す玉珍齋の本店(松葉隼氏提供)
玉珍齋
玉珍齋
台湾菓子文化を代表する百年老店
台湾中部彰化県の鹿港にある玉珍齋は、清朝統治期の1877年創業の老舗菓子店です。台湾では季節や生活の節目に合わせたさまざまなお菓子を食べ、贈る文化があります。約150年前から今日まで愛される玉珍齋は、こうした台湾の食文化を今に伝えています。鹿港はかつて中国大陸との貿易港であり、商業の中心地でした。バロック様式3階建ての本店は、かつての鹿港の繁栄と台湾社会における菓子文化の重要性を現在に伝える貴重な存在です。
学びのポイント
台湾の“餅”文化
台湾をふくむ中華圏において、お菓子には“糕 ”“餅”“酥”などの種類があります。ここでは、“餅”を紹介しましょう。漢字の“餅”が指し示す範囲は、日本でいう“餅”よりもはるかに広く多様です。台湾での“餅”は大雑把に言えば、米粉または小麦粉を使った、丸くて平たい形の食べ物を指します。「月餅」は日本でもよく知られていますね。「月餅」は日本でいう中秋の名月の日、すなわち「中秋節」(旧暦8月15日)によく食べられます。また、例えば結婚の時には台湾では「喜餅」と呼ばれるお菓子が幸せのおすそ分けとして配られます。現在では洋菓子も増えましたが、やはり伝統的に“餅”が贈り物とされています。このように、台湾では、“餅”がさまざまなお祝いや季節の変わり目で食べられ、あるいは贈り物とされ、生活や社会文化に密着しています。
貴重な台湾の“百年老店”
“老舗”と聞くと、一般的に創業から100年以上の歴史がある店を想像すると思います。台湾でもこうした老舗を尊敬と親しみをもって“百年老店”と呼びます。台湾の“百年老店”は、食品系の企業が多くを占め、そのなかでも菓子の製造と販売を行う伝統菓子店は特に多くの人に親しまれています。鹿港はかつて台湾有数の港町であり、多くの商人が行き交いました。台湾の米や砂糖を中国大陸に、中国の日用品や木材を台湾に運んでいたことから、多くの物資がこの鹿港に集まりました。現在も残る見事な鹿港龍山寺や天后宮はこの地が繁栄した証です。その鹿港で清朝時代の光緒3(1877)年に創業した菓子店が玉珍齋です。創業から約150年、台湾を代表する“百年老店”です。
「創立於清光緒3年」の文字(松葉隼氏撮影)
生活に密着する伝統菓子店
現在の玉珍齋本店は、日本統治時代の1932年に建てられました。バロック式3階建ての堂々たる洋風建築は、現在でも非常に目立つ建物で、100年近くにわたって鹿港のランドマークとして親しまれてきました。日本本土やドイツから輸入された部材を惜しみなく使って建てられた店は、当時の台湾社会における菓子店の地位を示しています。四季ごとに、また生活の変化に応じながらも、台湾の人々は菓子店で伝統菓子を買い求めてきました。玉珍齋はそんな生活の歴史を思い起こさせます。
「餅は餅屋」、みなさんも台湾でぜひお気に入りの“餅(伝統菓子)”を見つけてください。玉珍齋の商品は台北駅でも購入できますが、ぜひ鹿港の本店で百年老店の歴史を感じてみてください。
鹿港の中心部にたつ玉珍齋本店(松葉隼氏撮影)
さらに学びを深めよう
- 【事前学習】【事後学習】台湾の伝統菓子について調べてみましょう。
- 【現地体験学習】玉珍齋で気になる伝統菓子を買って食べてみましょう。和菓子や洋菓子と比べてどのような違いや、どのような特徴があるでしょうか。
参考資料
台湾の食文化については、SNET台湾編『臺灣書旅-台湾の食文化を知るためのブックガイド』をまず読んでみましょう。専門的に知りたい方には、陳玉箴著、天神裕子訳『「台湾菜」の文化史 : 国民料理の創造と変遷』(三元社、2024年)がおすすめです。赤松美和子・若松大祐編著『台湾を知るための72章【第2版】』の第51章「飲食文化 台湾美食の影に歴史あり」のなかで論じられています。台湾スイーツについては多くのガイドブックやレシピ本にも紹介されています。台湾料理については、みんなの修学旅行ナビ「大稲埕台湾料理研習所」もぜひご覧ください。パイナップルケーキについては、みんなの修学旅行ナビ「郭元益糕餅博物館」で詳しく紹介されています。
- ウェブサイト
- 公式
https://www.1877.com.tw/
(中国語)
- 所在地
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彰化県鹿港鎮民族路168号