美術館外観(福田栞氏提供)

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彰化縣立美術館

彰化県立美術館

彰化から人々と芸術文化を未来につなぐ

2014年に開館した彰化県立美術館は、台湾で7番目に建てられた比較的新しい公立美術館です。八卦山大仏風景区のふもと、図書館や生活芸術館などの施設が立ち並ぶ文教エリアに建っています。現在は収蔵品はないものの、開館以来、彰化出身の芸術家の作品を展覧するなど、一般の人々に美術を身近に感じてもらえるようなイベントを企画してきました。
2020年には故宮博物院所蔵の国宝「肉形石」が展示されましたが、彰化の名物「爌肉飯(豚の角煮丼)」とかけて、「看國寶肉形石、吃爌肉飯(国宝の角煮石を見て、角煮丼を食べよう)」と呼びかけました。また、彰化県政府主催の「彰化走讀藝術節(彰化を見て学ぶ芸術祭)」では、彰化県内にある歴史古蹟に、参加者の各々が考案した彰化に関するインスタレーション作品を展示しました。
このように、彰化の過去と現在について理解を深めるきっかけを提供すると同時に、人々が芸術文化に親しめる場を創造するよう努めています。

学びのポイント

彰化出身で著名な美術家は

陳景容(1934〜)が挙げられます。陳は日本統治時代の1934年に彰化で生まれ、小学生の頃まで日本式の教育を受けました。中華民国体制になった1946年に彰化中学に進学すると、徐々に美術制作への憧れを持ち始めます。大学入試に必要な素描や国画(水墨画)を学んだことはありませんでしたが、偶然にも陳が志望する台湾師範大学芸術系を卒業したばかりの人物と知り合い、絵を教わります。1952年に志望大学に無事合格し、卒業後は前衛美術団体として著名になる「五月画会」の創設メンバーとなります。1960年からは、日本の武蔵野美術大学や東京藝術大学に留学し、台湾では目にすることの少なかったアメリカの抽象表現主義に触れるとともに、フレスコ画やモザイクといった壁画や版画の技法を学びます。
台湾に戻った後は各地の芸術大学で教鞭をとり、後継者の育成に努めました。陳は、堅実なデッサンと画面構成に基づき、静謐な色調を用いて人間の内面を表現することにとことん向き合った画家です。台北にある国家音楽庁には、陳が手がけたフレスコ壁画《樂滿人間》が飾られており、彼の人間に対する洞察力を窺うことができます。

吳建福《天地之美(天地の美)》2014年(福田栞氏提供)

美術館の建物の特徴と武徳殿について

彰化県立美術館は、高さの異なる3つの建物が重なり合って構成されているのが特徴です。行政機関が入っている一番奥の建物は、窓の外側に鉄筋が斜めに交差する斜め柱構造を採用し、印象に残る設計になっています。これは、美術館のすぐそばにある八卦山の竹林や伝統的な格子窓に発想を得たデザインだと言われています。中庭には、陶芸家・吳建福(1966〜)が制作した、壁面パブリックアート作品《天地の美》が置かれています。この作品は、ガラスやステンレスなど、さまざまな材料を使用し、彰化に溢れる人々の英知と豊かな自然を意匠化したものです。彰化の街が自然と共存しながら人々の生活が繁栄するようにという、彰化県政府や彰化県立美術館の理想を体現しています。
隣接する武徳殿は、日本統治時代の1930年に竣工したものです。当時は警察の管理のもと武道場としての機能を果たしていました。台湾にはここ以外にも各地に武徳殿が残されており、いずれも歴史建築として登録されています。

1930年に竣工した彰化武徳殿(福田栞氏提供)

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】陳景容のウェブギャラリー、國美典藏-陳景容(1934) (ntmofa.gov.tw)をみて、自分の好きな作品を探し、その理由を説明してみましょう。
  • 【現地学習】作品をじっくり見て自分が好きな作品を探してみましょう。できれば、なぜその作品を良いと思ったのか、自分なりに言葉にしてみましょう。
  • 【現地学習・事後学習】印象に残った作品があれば、作者のことも調べてみましょう。
参考資料
赤松美和子・若松大祐 編著『台湾を知るための72章【第2版】』(明石書店、2022年)の「Ⅳ 文化」の各章で、台湾の文化活動の概要を知ることができます。また台湾の最新のアートシーンについては、栖来ひかり「『台湾原住民族』が『台湾原住民族』である所以」『美術手帖』2024年7月号が参考になります。

(福田栞)

ウェブサイト
公式 https://fam.bocach.gov.tw/Default.aspx

(中国語)

所在地
彰化市卦山路3号