総統府(中華民国総統府)
(行政組織・機構としての)総統府
総統府は中華民国の元首である総統、および副総統の執務を補佐する機関であり、政府主要機関間の調整を行っている。総統府直属の組織として、国史館や中央研究院が存在する。中華民国では1947年に中華民国憲法が発効、これにもとづき翌年に蔣介石が総統に選出された。1949年に中華民国政府が台湾に移転し、総統の執務場所として旧総督府が選ばれ、1950年に総統府と改称され現在に至っている。
(建築としての)総統府・総督府
総統府は台北市重慶南路一段122号にある、赤と白のコントラストが鮮やかな近代建築。1919年に台湾総督府として竣工し、現在は中華民国総統府として使用されている。台湾総督府はもともと、清朝の官庁である布政使司衙門の跡地に置かれていた(現在その地には、中山堂〈もと台北市公会堂〉がある)。業務拡張により次第に手狭となり、老朽化も著しかったため、1905年から本格的に移転の検討を始め、1906年から07年にかけて2度にわたってコンペと審査が行われた。その結果一等賞は出ず、二等に選ばれた長野宇平治の案を基に、総督府技師の森山松之助が修正設計を行った。森山は、中央の塔屋について原案よりも高く、目立つものに変え、台湾統治を象徴する建築物としての威容を強調した。外見は赤レンガを中心に、白い化粧石が用いられ、東京駅などの辰野金吾設計の建築物に通じるデザインとなっている。1945年の空襲で一部が損壊したが、台湾が中華民国に「接収」された後も政府機関として使用された。1946年には蔣介石の60歳の誕生日を記念して「介壽館」という名称が与えられた。1950年には正式に総統府となり現在に至っている。1998年、国定古蹟に指定。
もっと知りたい方のために
・黄昭堂『台湾総督府』ちくま学芸文庫、2019年
・台湾修学旅行アカデミー by SNET台湾 「第6回 建築物から知る台湾」(講師:上水流久彦)