前原志保氏提供

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渓和水産觀光工廠

渓和水産観光工場

最新の水産加工の技術を楽しく学ぶ

渓和水産は、宜蘭の利沢工業区にある水産加工会社です。創業は1955年で、豊富な漁業資源をもつ宜蘭の新鮮な海産物を、最新の冷凍技術を使って加工しています。2009年から工場見学プログラムを始め、2011年には宜蘭県の観光工場の認定を受けています。観光工場は3つのエリアに分かれています。一つ目のエリアには、60年に及ぶ会社の歴史、宜蘭の海洋環境、水産加工の特徴などが壁面にマンガで描かれ、海産物をパッケージングする様子をガラス越しに見学できます。二つ目のエリアでは、昔ながらの竹製の道具を使った伝統的な水産加工技術を体験し、各水産物の特性を学ぶことができます。三つ目のエリアでは、この工場で加工された商品を試食し、買うこともできます。また、別料金ですが、海産物を購入して調理できる「職人体験DIY」のコーナーや魚定食が食べられる食堂も併設しています。

学びのポイント

宜蘭で獲れる漁業資源

太平洋に面した宜蘭の近海には多くの漁場があり、南方澳漁港は高雄港、東港(屏東県)とともに台湾三大漁港とされています。外海を流れる黒潮の影響で回遊魚の種類が多く、沖合・遠洋漁業の拠点となっています。大型魚では、マグロ、カジキ、サメなどが獲れますが、南方澳の特産といえばサバで、台湾全体のサバの漁獲量の9割が南方澳で獲れます。毎年秋には「サバ祭り」が行われ、多くの観光客で賑わいます。また、日本では高級魚とされるアカムツ(ノドグロとも呼ばれる)が獲れることでも有名です。

(前原志保氏提供)

魚の鮮度と味を保つ最新の冷凍加工技術

この工場では、2008年からHACCP(ハサップ:Hazard Analysis Critical Control Point/危害要因分析重要管理点)というシステムが、また2018年からは日本で開発されたセルアライブシステム冷凍(CAS冷凍)という冷凍技術が導入されています。HACCPは原材料の受け入れから最終製品までの工程ごとに、微生物による汚染、金属の混入などを予測し、監視、記録する工程管理システムです。CAS冷凍は、水を過冷却の状態にして瞬時に凍らせて食品の細胞膜を傷つけず、鮮度、食感、旨味、色味などを保つことができる技術です。従来の冷凍技術では、食品が表面から冷凍される過程で内部の水が膨張し、食品の細胞膜を傷つけていました。また、解凍時には冷凍時にできた傷から細胞内の栄養がドリップと呼ばれる水分とともに流れ出し、食品の味を落としていました。CAS冷凍はそれらを防ぎ、おいしさを保ちます。
さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【現地体験学習】宜蘭で獲れる海産物で有名なものは何でしょうか。日本では見かけない魚はありますか。工場の最後の市場エリアで気になる魚を見つけたら、日本語では何というのか、日本でも獲れるのか、調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】宜蘭には、味はよいが鮮度がすぐに落ちてしまうため優れた加工技術が求められる海産物があります。それはなんでしょうか。ヒントは二つ目のエリアの壁にあります。
  • 【事後学習】HACCPやCAS冷凍は、日本ではどのように活用されているか、食品の流通について考えてみましょう。
参考資料
HACCPに関しては、HACCP認証協会のサイトでその詳しい技術や世界食品安全技術の歴史について学ぶことができます。CAS冷凍については、この技術を開発した株式会社アビーのウェブサイトを参照してください。南方澳漁港に関しては、台湾修学旅行ナビの南方澳漁港を参照。宜蘭と沖縄との接点についても学ぶことができます。

(前原志保)

ウェブサイト
公式https://www.siho.com.tw/category/145146

(中国語)

所在地
宜蘭県五結郷利興二路11号

特記事項
団体は要事前予約。