美濃客家文物館 美濃客家文物館

1990年代の美濃を象徴する文化のメモリアルホール

陳文栄提供

美濃客家文物館(以下、文物館)は2001年4月に開館した、美濃の客家文化を展示する施設です。展示内容は客家文化や農村文化が中心で、とくに美濃の主要産物であった葉タバコ関連の文化に詳しく、その他にも客家の労働習慣、タバコ小屋の景観、ダム建設反対運動やそれらの文化・歴史をモチーフとする現代アートまでが網羅されています。

学びのポイント

社会運動と公定台湾ナショナリズムとの融合

文物館の歴史は、1996年に美濃愛郷協進会(以下、協進会)が、当時の高雄県政府(高雄県立文化中心)から文物館の設計および企画を委託されたことに遡ります。協進会は美濃に予定されていたダムの建設反対運動のため、1994年に作られた社会運動団体ですが、ダム建設に反対する理由(対抗言説)を構築する上で美濃の客家文化の重要性を訴えており、その言説は民主化運動の熱冷めやらぬ当時、勃興する市民社会の台湾ナショナリズム、とりわけ台湾客家ナショナリズムと強く結びついて、台湾全土に美濃の名声を広めました。

陳文栄提供

社会運動団体による公設民営案とその挫折

文物館の企画過程では、高雄県政府文化局(当時)と協進会のあいだで協進会側が自由に運営できるようBOT(Build Operate Transferの略、日本でいう指定管理者制度のような制度)で協進会が運営するという案がありましたが、美濃出身の県議会議員の反対に遭い、文物館は結局、県政府文化局の管理の下で開館しました。2010年の県市合併後は、高雄市客家事務委員会がこれを引き継いでいます。文物館には、対抗言説の一環として美濃の客家文化を政府との関係を築きながら補助金で具体化していく協進会の努力と、それによって構築された台湾客家文化が公定ナショナリズムとして政府に受け入れられていく過程が融合しています。

さらに学びを深めよう

  1. 【事前学習】【事後学習】1980年代に始まった台湾客家の社会運動について調べてみましょう。
  2. 【現地体験学習】客家の料理についての展示を見て、客家の食文化の特徴を考えてみましょう。

参考資料

全体的な民主化、台湾化についての本は若林正丈『台湾 変容し躊躇するアイデンティティ』(ちくま新書、2001年)を読んでみましょう。専門的ですが、星純子『現代台湾コミュニティ運動の地域社会学 高雄県美濃鎮における社会運動、民主化、社区総体営造』(御茶の水書房、2013年)もおすすめです。台湾の客家については、田上 智宜「「客人」から客家へ--エスニック・アイデンティティーの形成と変容」(『日本台湾学会報』第9号、2007年)が詳細に論じています。鍾理和、李喬、彭小妍、呉錦発著、松浦恆雄監訳『客家の女たち』(国書刊行会、2002年)には、客家の女性たちを主人公とする短編小説集です。

(星純子)

ウェブサイト
公式https://meeinonghakka.kcg.gov.tw/ 高雄旅遊網(高雄市政府観光局)https://khh.travel/Article.aspx?a=6423&l=3&stype=1058&sitem=4111
所在地
高雄市美濃区民族路49-3号
特記事項
20人以上で見学の場合はガイド配置の都合上火曜日―金曜日までに見学のこと。2週間前までに申請。見学は1時間以内。申込書は以下のURLからダウンロードhttps://meeinonghakka.kcg.gov.tw/Content_List.aspx?n=C8863D2FC95A3648