高雄市立歴史博物館は、建物自体が最も重要な収蔵品であり、最大の展示物でもあります。最大の特色は「帝冠様式」という建築様式で、鉄筋コンクリート造りに、屋根や壁などに東洋風の装飾が施されている特殊なデザインです。洋風建築に東洋風のテイストを組み合わせた「帝冠様式」は、昭和初期だけに限ってみられ、台湾では特に高雄に多く建造されました。これは、高雄が戦時体制下の南進政策の拠点として位置づけられたことと無縁ではないと思われます。南進基地の最前線の重要な行政機関としての威厳をアピールする一方で、日本の伝統様式を際立たせ、「帝国臣民」としての意識を高めようとする時代を象徴するデザインともいわれています。
建物は最大の展示物、ロビー各所に和洋折衷の建築要素が見られます(張暁旻撮影)
日本の統治が終わり、中華民国が台湾を接収して間もなく、1947年に台北で二二八事件が勃発、のちに台湾各地に拡大して高雄市内でも騒乱が起こります。市政府、議会や地方有力者は、3月5日に高雄二二八事件処理委員会を組織し衝突の拡大を抑えようとしましたが、翌6日に高雄要塞司令部が鎮圧命令を出し、軍隊が市政府や高雄駅に突入して無差別に発砲を行い、数多くの死傷者が出ました。大陸からの支援軍による台湾全土での大弾圧が始まった同8日より2日も早かったのです。こうして、高雄は台湾で初めて軍事鎮圧された地となり、博物館も二二八事件の重要な現場となりました。毎年2月28日になると、博物館ではその追悼式や記念イベントなどが開催されます。
1/20のジオラマで二二八事件の現場を再現(張暁旻撮影)