壽山國家自然公園 寿山国家自然公園

工業都市に浮かんだ巨大な生態デパート

倉本知明撮影

寿山は高雄市西部の海岸線に沿ってそびえる海抜356メートルの山で、弓なりに連なる旗後山、亀山、半屏山と合わせて、その全域が国家自然公園(日本の国立公園)に指定されています。山全体が隆起した珊瑚礁からなる石灰岩によって形作られて いるために、山中の至るところに天然の鍾乳洞が広がっています。整備された登山道には巨大なガジュマルの根が天然のカーテンのように垂れ下がっていて、澄んだ声で鳴くアカハラシキチョウやニホンザルに似たタイワンアカゲザルなど、野生の 動物がところ狭しと飛び交う姿が見られます。巨大な工業都市にありながらこうした豊かな自然環境が残されてきたのは、寿山が戒厳令期を通じて長らく軍事管制区として管理されてきたためでした。自然公園内では豊かな自然以外にも、清朝時代 に建設された英国領事館や日本統治時代の神社の跡地など、様々な歴史的遺跡も見ることができます。

学びのポイント

どうして寿山という名前がついたのか?

寿山は時代によって異なった名前で呼ばれ、万寿山、打狗山、埋金山、麒麟山、猴山など、たくさんの名前がありました。そんな寿山が現在の名前に改称されたのは1923年4月のことでした。当時まだ皇太子だった昭和天皇が高雄を行啓した記念として、「打狗山」が「寿山」と改称されたのです。昭和天皇が宿泊した場所は「登山街60巷」と呼ばれる寿山南部に広がる景勝地で、現在は様々な異民族によって統治されてきた高雄港の歴史を体験する野外展覧場になっています。地元の人たちはいまでも寿山を「柴山」と呼んでいますが、それはその昔、寿山で芝刈りをしていたことが由来になっていると言われています。

倉本知明撮影

自然以外の見どころは?

寿山国家自然公園の北部には網の目のような登山道が広がっていますが、高雄港に面した寿山南端には、多くの歴史的建築物が集まっています。中華民国の軍人たちが祀られた高雄忠烈祠は、高雄市を一望できる場所に立っていますが、これは日本への台湾割譲後に起こった平定戦闘中に病没した北白川宮能久親王を祀るために建てられた高雄神社跡地に建設されたものです。そのために、境内にあった灯籠や大鳥居、狛犬などがいまでも残っています。また、高雄忠烈祠のすぐ近くには、1865年に建設された台湾初の洋式建築である英国領事館があって、半円形のバルコニーから西子湾に沈む夕日を一望することができます。初代台湾駐在英国領事であったロバート・スウィンホーは博物学者としても有名で、寿山に暮らすタイワンアカゲザルなど、多くの台湾動植物の名付け親でもあります。

倉本知明撮影

さらに学びを深めよう

  1. 【事前学習】【事後学習】高雄神社に祀られていた北白川宮能久親王はどんな人物だったのか調べてみましょう。
  2. 【事前学習】【事後学習】寿山の自然環境を守るために、高雄ではどのような活動があったのか調べてみましょう。
  3. 【現地体験学習】アカハラシキチョウやタイワンアカゲザル以外に、寿山には日本にいないどんな動植物がいるのか探してみましょう。

参考資料

台湾の動植物の生態や国家自然公園に関する日本語の書籍は少なく、その多くはインターネットのウェブサイトに掲載されています。ネットで公開されている寿山の動植物に関する書籍(中国語)としては、宋永昌『寿山国家自然公園生態図鑑:百年打狗・生態寿山』(財団法人中鋼集団教育基金会、2012年)が便利です。また、皇太子時代の昭和天皇の高雄行啓に関しては、坂野徳隆『風刺漫画で読み解く日本統治下の台湾』(平凡社新書、2012年)などに詳しく書かれています。台湾に建立された神社については、金子展也『台湾に渡った日本の神々』(潮書房光人新社、2018年)などで詳しく調べることができます。

(倉本知明)

ウェブサイト
公式https://nnp.cpami.gov.tw/
所在地
高雄市鼓山区萬寿路301号
特記事項
タイワンアカゲサルに餌付けをすることは禁止されています。