永齡農場
永齢農場
台湾最大級の有機農場
永齢農場は鴻海グループの創設者である郭台銘が「八八水害」の被災者を支援するために設立した有機農場です。 2009年に台風モーラコット(台風8号)が台湾に記録的な大雨をもたらし、台南、屏東、高雄など多くの場所で洪水を引き起こしました。最も深刻な被害を受けたのは、高雄県小林村(現在の高雄市甲仙区小林里)でした。村は洪水と土石流によって埋まり、500名近くが命を奪われ、メディアは「滅村」と報じました。当時の政府の要請により、鴻海グループ傘下の永齢基金会が河岸の修復、農場の建設などの資金援助を行い、被災者たちが生活を再建できるように雇用の機会を生み出しました。しかし、農場経営は必ずしも順風満帆というわけではなく、2017年のブランド化が成功して、初めて収支のバランスがとれました。永齢農場は54ヘクタールの敷地を有し、年間を通じて数百種類の有機果物や野菜を生産する豊かな生態環境です。事前予約すると、担当者によるガイドがつきます。農業体験や食育教育などのコーナーのあるエリアもあります。永齢農場では、生産型農園からレジャー機能のある観光農園への変革をめざしています。 2020年8月18日、郭台銘は、農場の管理権を農家に譲渡することを発表しました、被災者、農家の真の自立とは何か、引き続き私たちは注意深く見守っていく必要があります。
学びのポイント
小林村は先住民族部落
小林村には平埔民族のタイボアン族が多く住んでいました。かつてこの部族はシラヤ部族の一支族と見なされていましたが、後に一部の学者が、言語や文化がシラヤ部族と明らかに異なると指摘しました。しかし、今のところ、独立した民族として政府の認定は受けていません。自然災害に見舞われた小林村の住民は、災害の後も、以前と同じように、毎年旧暦の9月15日に、彼らが信仰する神「太祖」に祈りを捧げる祭事を行っています。
大企業が推進する有機農業とは?
永齢農場は台湾で最大級の有機農場として知られていますが、台湾の有機農業にはまだ多くの困難とボトルネックがあることを理解する必要があります。永齢農場は特例中の特例です。たとえば、既存の農家が従来の農法から有機農法に切り替えたい場合、周辺の農地に農薬が散布されているか、また、有機認証を取得する方法を学ぶなどの問題を克服しなくてはなりません。また、都会から地方へ引っ越してきた新規就農者の場合、用地取得や販路の問題にも直面します。従来の農家が耕作しなくなった場合、ほとんどの農家は、地縁のない新参者の有機農家ではなく、従来の方法で農業を行う人に農地を渡します。新規就農者が有機米などの栽培に成功しても、販売方法にも大きな問題があり、この問題が解決できない場合は、「半農半X」という余暇的な生活を維持するしかありません。
永齢農場ではどんな動物が見られる?
渡り鳥のコチドリ、 細長い脚が特徴のセイタカシギ、日本ではあまり見られないオウチュウ、人語などを真似できるハッカチョウのほかに、台湾野生のウサギ、アオスジトカゲ、ノバリケン(鴨)を観察することができます。
従業員から経営者へ?
永齢農場の経営方式はBOT(Build-Operate-Transfer)という「民間(事業者)が公共サービスに関わる施設を建設し、一定期間の運用を行い、期間満了後に移管する仕組み」を採っています。したがって、永齢農場は2021年末にすべての農家にその管理権を譲渡する予定です。形式上は、農民が協同組合を結成します。2020年7月末には、120人の農民の60%が新しく設立された協同組合に参加することを表明しています。残りは近隣の美濃、旗山地区の農民が加入できるようにするものと予想されます(2020年9月現在)。永齢農場ブランドは引き続き使用されますが、真の挑戦はこれからです。
さらに学びを深めよう
- 【事前学習】【事後学習】日本において、個人で有機農業を行うには、どのような準備が必要で、どのような課題をクリアする必要があるか、調べてみましょう。
- 【事前学習】【事後学習】永齢農場のように、台風や豪雨で土砂崩れなどの被害を受けた地域では、産業復興・復旧がどのように進められたか。新たな取り組みのきっかけとなった事例についても、調べてみましょう。
参考資料
永齢農場のFacebookページでは、農場の最新の動きを知ることができます。