西村一之撮影

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東港魚市場

東港魚市場

食から台湾と日本の関係を知り、さらに食のグローバルネットワークを考えよう

正式名称は「東港漁港漁産品直銷中心」(東港漁港漁産品直販センター)です。東港魚市場がある屏東県東港鎮(町)は、清朝期に商港として栄え、日本統治期に水産業が盛んとなって、現在は台湾屈指の港町です。沖合にはマリンレジャーで有名な島、小琉球があり、この島との間を結ぶ船が発着します。東港魚市場には新鮮な海産物を目当てに多くの観光客が集まります。東港魚市場は、地元では「華僑市場」と呼ばれています。その名前の由来は、きれいな身なりをして気前よく買い物をする外から来た客たちを、土地の人びとが「華僑」と呼んだからと言われています。2012年、地域振興のため華僑市場は観光水産市場としてリニューアルされました。

学びのポイント

市場を歩いて

魚市場では新鮮な魚介類やそれらの加工品が売られています。また、これらを食材とした料理を提供する食堂が並んでいます。東港には三つの名産(東港三寶)があります。クロマグロ、サクラエビ、アブラソコムツの卵を干した「油魚子」です。歩いているとすぐ目に入ります。

マグロから見える台湾と日本の関係とは?

東港漁港では毎年5~6月に、遠洋マグロ漁船が水揚げをします。この港は、台湾で最も有名なマグロ水揚げ港で、魚市場にもマグロがたくさん並びます。マグロは普通刺し身で食べられ、日本と同じように、ワサビを添え、醤油をつけて食べます。他の魚の刺し身とともにきれいに盛り付けられて出てくる食堂もあります。台湾でもsa-si-mih(サシミ)と呼び、「生魚片」と書きます。元々台湾の人びとに生で魚を食べる習慣はありません。日本統治期に生魚を食べる文化が伝わり、1990年代からの日本文化流行と健康食志向もあって、現在ではサシミは台湾の人びとの食文化として定着しています。東港漁港で水揚げされたマグロの一部は日本へも輸出されています。同じ船で獲ったマグロを、台湾の人と日本の人が食べているかもしれません。

西村一之撮影

サクラエビから見える台湾と日本の関係とは?

東港沖合は、サクラエビの好漁場です。11月から翌年5月にかけて水揚げがあります。元々東港の人たちは、サクラエビを食用と見なしていませんでしたが、1980年代に日本のバイヤーが買い付けに現れ、日本人研究者が研究に来たことから、食用となることが知られるようになりました。食堂ではサクラエビチャーハンを勧められるでしょう。サクラエビも日本に輸出されています。なお、日本でサクラエビがとれるのは駿河湾(静岡県)のみです。

西村一之

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】日本の食卓に上るマグロがどこからやってくるのか調べてみましょう。
  • 【事前学習】クロマグロは、海洋資源の持続的利用のため国際機関による管理の対象となっています。そうした管理機関にはどのような国と地域が加盟しているでしょうか。また、それに台湾が加盟したのはいつでしょうか。
  • 【事前学習】【事後学習】今、遠洋マグロ漁船の乗組員の多くが、主に東南アジアから来る外国人労働者です。東港漁港を歩けば彼らを見かけ、市場の周辺にはかれらの故郷の物を売る雑貨店があります。日本と台湾の外国人労働者の置かれている状況を調べてみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】市場は大鵬国家風景区の中にあり、クロマグロは東港の観光資源です。2001年より「黒鮪魚文化観光季」(クロマグロ文化観光フェスティバル)が催されています。自身が暮らす地域をデザインすることと観光化について討論してみましょう。
参考資料
東港魚市場の「黒鮪魚文化観光季」と「東港三宝」(クロマグロ・サクラエビ・油魚子=アブラソコムツの卵)については、大鵬湾国家風景区のウェブサイトに紹介があります。台湾のマグロ漁については、社団法人責任あるまぐろ漁業推進機構(OPRT)のニュースレターに、台湾の大型マグロはえ縄漁船の団体である台湾区遠洋鮪延縄釣漁船魚類輸出業同業公会の謝文榮理事長(2014年当時)のインタビューが掲載されています。「マグロ大国・台湾は今」(『OPRTニュースレター』No.66、2014年6月、)。

(西村一之)

ウェブサイト
交通部観光局https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003122&id=A12-00213 交通部観光局大鵬湾国家風景区管理処 http://www.tkfisher.org.tw/WebPad/WebPad.aspx?EpfJdId9UuB8Du0CDA69lw8iKiRqvNxKIztaWeirii4%3d
所在地
屏東県東港鎮朝隆路39号
特記事項
アブラソコムツは台湾で「油魚」と言います。名前の通り、脂がのったその身は美味です。東港魚市場ではそのサシミが提供されていますが、厳重な注意が必要です。この魚の油は強い消化不良を起こすため、日本では販売が禁止されています。