魚市場では新鮮な魚介類やそれらの加工品が売られています。また、これらを食材とした料理を提供する食堂が並んでいます。東港には三つの名産(東港三寶)があります。クロマグロ、サクラエビ、アブラソコムツの卵を干した「油魚子」です。歩いているとすぐ目に入ります。
東港漁港では毎年5~6月に、遠洋マグロ漁船が水揚げをします。この港は、台湾で最も有名なマグロ水揚げ港で、魚市場にもマグロがたくさん並びます。マグロは普通刺し身で食べられ、日本と同じように、ワサビを添え、醤油をつけて食べます。他の魚の刺し身とともにきれいに盛り付けられて出てくる食堂もあります。台湾でもsa-si-mih(サシミ)と呼び、「生魚片」と書きます。元々台湾の人びとに生で魚を食べる習慣はありません。日本統治期に生魚を食べる文化が伝わり、1990年代からの日本文化流行と健康食志向もあって、現在ではサシミは台湾の人びとの食文化として定着しています。東港漁港で水揚げされたマグロの一部は日本へも輸出されています。同じ船で獲ったマグロを、台湾の人と日本の人が食べているかもしれません。
西村一之撮影
東港沖合は、サクラエビの好漁場です。11月から翌年5月にかけて水揚げがあります。元々東港の人たちは、サクラエビを食用と見なしていませんでしたが、1980年代に日本のバイヤーが買い付けに現れ、日本人研究者が研究に来たことから、食用となることが知られるようになりました。食堂ではサクラエビチャーハンを勧められるでしょう。サクラエビも日本に輸出されています。なお、日本でサクラエビがとれるのは駿河湾(静岡県)のみです。
西村一之