台湾北部の大都市である台北ではなく、台湾南部から台湾を理解する視角を示してくれる本として、大東和重『台湾の歴史と文化』(中公新書、2020年)があります(故宮南院のある嘉義ではなく、台南という都市を主な舞台とするものです)。故宮博物院が中国大陸から台湾に移転したことの意義や、台湾における故宮博物院の社会的位置づけの変化については、松金公正「台北故宮における「中華」の内在化に関する一考察」植野弘子・三尾裕子編『台湾における〈植民地〉経験』(風響社、2011年)や、家永真幸『国宝の政治史』(東京大学出版会、2017年)などをご覧ください。台湾の人々の「本土」意識や、文化の多様性を重んじる姿勢については、若林正丈・家永真幸編『台湾研究入門』(東京大学出版会、2020年)所収の何義麟「台湾人アイデンティティ」、田上智宜「多文化主義」などが参考になると思います。
(家永真幸)