17世紀にオランダが来航して以来、台湾へは海の向こうの中国大陸から、数多くの漢人が労働力として移民してきます。漢人が来る前に、台湾の地を住まいとしていたのが、先住民たちです。台湾の先住民はオーストロネシア語族に属し、現在16のグループが認定されています。先住民は中部の山岳地帯や東部の平地、離島などを居住地としてきました。茂林国家風景区に位置する「多納(トナ)」は、先住民族のグループの一つ、ルカイ族の集落です。
大東和重撮影
多納の駐車場でバスを下りたら、早速集落を歩いてみてください。「スレート」と呼ばれる平らな石を無数に積んだ家々が並んでいます。村の中には教会があり、週末なら礼拝に多くの人が集まり、賛美歌を歌っていることでしょう。村はずれまで来ると、中央山脈の2000メートル近い山がそびえます。見下ろすと、谷間に小さな畑が切り開かれ、季節によっては収穫した粟などが干されています。しかし、下界と隔絶した世界というわけではありません。人々に話しかけてみてください。「あら、日本から来たの。私、先週、富士山に行ってきたばかり」といった返事がかえってきたりするでしょう。
茂林国家風景区は、その名の通り、荒々しくも豊かな自然を満喫できる土地です。坂を登り続けるバスからは、川が大きく湾曲した「スネークヘッド」などの絶景を楽しむことができます。そして忘れてはならないのは、ここ茂林が「蝶の谷」と呼ばれていること。「紫斑蝶」という名の大型の紫の蝶が乱れ飛ぶさまは、台湾の自然の美しさを象徴する風景です。