帝国日本の南進基地とされていた台湾南端に位置する高雄には、製油や造船、鉄鋼やセメントなどの工場が数多く建設され、さらに海軍基地や飛行場が建設されていたために、戦争中はアメリカ軍の主要な攻撃目標となりました。市内には第二次世界大戦を通じて2559トンもの爆弾が落とされ、死傷者が4000名を超えるなど、台湾で最も大きな被害を受けた都市でした。空襲による被害を軽減する目的で高雄市内には多数の防空壕が建設され、その跡はいまでも随所で目にすることができます。2018年には、第二次世界大戦下の高雄を舞台にしたボードゲーム『高雄大空襲』が発売されましたが、そこでは異なる種族、民族、宗教のプレイヤーたちの「生存」がテーマになっています。このボードゲームは、台湾の人気ロックバンド滅火器が主題歌「一九四五」を歌ったことでも話題となりました。
倉本知明撮影
日本統治時代、鉄道員たちの避難用に造られた鼓山洞は、戦後台湾警備総司令部に接収され、外部から断絶されたその密閉空間を利用した政治犯の抑留、拘禁などに使われた暗黒の歴史もあります。1987年に戒厳令が解除されると、鼓山洞は高雄市警察局の管理となりましたが、長年忘れられた存在となっていました。ところが、2019年に当時の高雄市長韓国瑜が観光振興を目的として、市内に残る軍事施設を観光資源として活用することを提唱したために、鼓山洞も一般公開されることになりました。同市長は、鼓山洞をはじめとする高雄各地に残る防空壕跡地に日本軍が隠した金銀財宝が埋まっているかもしれないと発言し、大きな話題になりました。
倉本知明撮影