鳳山区は清朝時代から発展した古い街で、現在でも多くの廟や寺院が残されています。鳳山天公廟や鳳山鳳邑城隍廟といった道教寺院だけでなく、鳳山長老基督教堂といったキリスト教教会、高雄のイスラム教徒たちが参拝する高雄清真寺など、多くの宗教施設が集まっています。また、無線電信所近くには中華民国陸軍士官学校があって、軍服を着た若い士官たちの姿を目にすることができます。士官学校のすぐ隣には、台湾で最初に建設された眷村で、現在は文化保存区域に指定されている黄埔新村などもあります。
倉本知明撮影
戦後、鳳山海軍招待所、海軍明徳訓練班と名前を変えてきた元日本海軍鳳山無線電信所ですが、時期によってそれぞれ異なった性格を持っています。国共内戦がいまだ熾烈を極めていた鳳山海軍招待所時代(1949-62年)には、中華民国海軍が中国共産党に投降する事件が相次いで起こっていたこともあり、海軍内部の政治・思想犯を監禁、尋問する役割を担っていました。明徳訓練班時代(1962-2001年)になると、海軍内部の規律違反者や落ちこぼれたちを「再教育」する場所として機能していましたが、どちらにせよ、当時の政府にとって都合の悪い人たちを閉じ込めておく場所であったわけです。その後、2010年には国指定の古跡と認定され、現在はかつての歴史を知る重要な歴史遺産となっています。
倉本知明撮影