梅花鹿が出迎える農園の入り口(國府俊一郎撮影)

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テーマ

阿信巧克力農場

阿信チョコレート農場

梅花鹿(ハナジカ)とふれあいながらカカオについて学ぼう

恒春半島を海沿いに南へ進むと、リゾートホテルの向かいの丘に阿信チョコレート農場が現れます。カカオをはじめとする熱帯植物に囲まれ、リスや鶏、梅花鹿(ハナジカ)などの動物と出会える自然豊かな環境です。ここでは、カカオの実からチョコレートができる過程を、展示やスタッフの実演を通じて、味覚・触覚・嗅覚で体験することができます。また、カカオの栽培や製造を学ぶだけでなく、グループでチョコレートを使ったお菓子づくりを体験することもできます。夜は農場探検ツアーに参加して、放し飼いの梅花鹿がきらりと目を光らせる様子を観察して楽しむことができます。台湾の自然と農業について学べるほか、台湾産カカオを使ったチョコレートやアイスクリームなどを味わえるのも大きな魅力です。

学びのポイント

カカオと台湾の気候

チョコレートの原料として知られるカカオは、南米の熱帯地方が原産です。本来、カカオは熱帯雨林に育つ植物であり、北緯20度から南緯20度の間の「カカオベルト」と呼ばれる範囲で生育します。台湾最南端の屏東県は北緯22度付近にあり、若干緯度が高いのですが、夏は高温多湿であるためカカオの生育に適していると考えられ、1922年から栽培されています。よく「カカオ豆」と呼ばれますが、豆類ではありません。カカオは熱帯のフルーツで、カカオ豆はその種子です。この種子を発酵させ、乾燥させ、さらに焙煎すると、ココアやチョコレートの材料となります。阿信チョコレート農場では、カカオの実から種子を取り出す実演も行われています。

堅いカカオの実から種を取り出す(國府俊一郎撮影)


台湾の食育とチョコレート

台湾では、2022年に制定された「食農教育法」の下で、健康的な食事と、その基盤となる農業に関する教育が強化されています。現在でも台湾では、肥満の原因になる、あるいは興奮し過ぎてよくないとして、子どもにチョコレートを食べさせない親が少なくありません。しかし、カカオにはポリフェノールやミネラルなど豊富な栄養が含まれており、子どもを興奮させる成分は含まれていません。肥満の主な原因は、チョコレートに含まれる大量の砂糖です。阿信チョコレート農場では、このような、カカオという食材に関する正しい知識を得ることができます。 台湾南部の農業では、かつて檳榔の生産が盛んでしたが、近年は需要が減少し、農家の収入減少の要因となっています。一方、カカオはチョコレートだけでなく、ココアやお茶、各種ケーキなどにも広く利用されており、市場価格も安定しています。そのため、カカオの生産は農家の持続的な発展にも役立っていると言えるでしょう。

カカオの実(國府俊一郎撮影)


梅花鹿とふれあう

鹿子模様とは、鹿の子どもや夏毛の大人の鹿に見られる白い斑点模様(白斑)のことです。台湾原産の鹿である梅花鹿には、一年を通して白斑が見られます。かつて台湾は「鹿の島」と呼ばれるほど多くの梅花鹿が生息していましたが、人間の活動によって1965年に野生の個体は絶滅しました。その後、民間で飼育されていた梅花鹿が屏東県に持ち込まれ、現在は徐々に数を増やしつつあります。 阿信チョコレート農場では、11頭の梅花鹿が放し飼いにされており、鹿への餌やり体験ができます。また、夜の農場ツアーでは、暗闇の中で目を光らせながら活動する梅花鹿の姿を観察できます。

園内で飼育されている梅花鹿(山﨑直也氏提供)


さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】カカオの栄養成分について調べ、それぞれの成分がどのように私たちの心身の健康に役立つのか調べましょう。
  • 【現地体験学習】カカオがチョコレートになるまでの過程を体験しながら学習しましょう。また、カカオ豆自体の味を確かめてみましょう。
  • 【事後学習】フェアトレードについて調べ、世界のカカオ生産の問題点を挙げてみましょう。そしてその視点から、台湾でのカカオ生産にはどのようなメリットがあるのか考えてみましょう。
参考資料
日本の製菓メーカーによる台湾産のチョコレートについての特集記事があります(株式会社明治「近年注目のカカオ産地、台湾産カカオのチョコレートについて」)。また、中国語ですが、このページ(https://fae.moa.gov.tw/map/county_agri.php)に台湾の農業分布についてのまとめがあります。翻訳機能などを用いて読んでみましょう。さらに専門的知識を深めたい人は、上田遥「台湾の食育政策」(栄養学雑誌 81 (3), 129-137, 2023年6月)という論文に挑戦してみましょう。

(國府俊一郎)

ウェブサイト
公式 https://www.taiwanchoco.com.tw/

(中国語・英語)

所在地
屏東県恒春鎮山海里萬里路10-8号

特記事項
DIYは要予約(電話:+886-(0)8-886-9696)。