校内で行われているファッションショー(国立台南家斉高校提供)
学校の外観(国立台南家斉高校提供)
國立台南家齊高級中等學校
国立台南家斉高等学校
実学・芸術・国際性:三つの力を育む、古都の学び舎
国立台南家斉高等学校は、台湾の古都・台南に位置しています。かつては女子教育の重要な拠点の一つでしたが、時代の流れに応じて男子生徒を受け入れ、共学化によって新たな教育理念を打ち出しています。同校は1924年に台南商業補習学校に附属する1年制の女子専修科として創設されました。1933年には台南女子技芸学校として正式に独立し、翌1934年には現在地の新校舎へと移転しました。その後、1937年に台南実践女学校、1941年に台南家政女学校、そして1944年4月に台南商業実践女学校と改称されました。戦後も数回の改称や改編を経て、1972年8月に台湾省立台南家斉女子高級中学となり、家政科を継続しながら初めて「家斉」の二文字が校名に加わりました。2016年からは普通科に男子生徒80名を受け入れ、職業科でも性別制限を撤廃して共学化が進み、現在の校名に変更しました。実学と芸術教育を重視し、国際交流を積極的に推進している点が、同校の大きな特徴です。
学びのポイント
始まりは100年前の女子家政教育
日本統治期の台湾では、家政系の女学校は、高等女学校と異なる性格を持つ女子教育機関でした。高等女学校が修身、国語、音楽、裁縫などを通じて「良妻賢母」育成型の中等教育を行う機関だったのに対し、家政系の女学校は、より実用的な職業技能や家政知識の習得を目的とした実業教育機関でした。ただし、いずれも主に日本人女子が教育の対象であり、台湾人女子の就学はごく限られていました。家斉高校の前身は、台湾初の公立の家政系女学校でした。同校は市の南側に位置し、そこは古蹟や行政機関が集中する府城旧市街と、新興の教育・医療施設が混在するエリアとの結節点にあたります。日本統治期の正門は、現在は通用門であり、そのかたわらには今も大きなガジュマル(榕樹)が立っています。これは、長年ここで学んだ生徒たちの記憶に宿る風景の一部であり、学校の変遷と記憶のランドマークでもあります。
四合院風のキャンパスと実学重視の教育
四棟の建物が中庭を囲むキャンパスは、台湾の四合院建築にも通じるもので、学びと対話が自然に生み出される場となっています。敷地面積は比較的小規模ですが、教育内容の多様性と質の高さは特筆されます。普通科は文系と理系に分かれており、国際的な人材育成を目指した中国語と英語によるバイリンガル実験クラスや、数理実験クラスも設けられています。そのほか、バレエ、現代舞踊、民族舞踊などを幅広く学ぶ少人数制の舞踊クラスも人気があります。職業科は、調理技術だけでなく、飲食業におけるサービスやマネジメント、衛生管理、接客などを総合的に学ぶ餐飲管理科と、衣服のデザインや縫製、ファッションコーディネートを学ぶ流行服飾科とに分かれています。このような実学重視の教育と並行して、日本を含む世界各国の高等学校との交流も活発に行われています。
封印された歴史の記憶をたどる
2024年、同校は創立100周年を迎えるにあたり、記念誌の編纂や関連行事の開催を通じて、その長い歴史を振り返りました。同校の多様な教育方針を反映して、卒業生は文学、芸術、教育、社会福祉など、さまざまな分野で活躍しています。歴史を振り返るにあたり特筆すべきことの一つは、白色テロによって犠牲となった卒業生、施水環をテーマとした特別展でした。施水環は1939年に同校に入学し、卒業後は台南貯金管理所に勤務していましたが、1947年に職場が台湾郵電管理局に統合されたことに伴い、故郷を離れて台北へと移りました。その後、1954年にいわゆる「台湾青年民主協進会吳麗水等案」に巻き込まれ、逮捕されて銃殺刑に処せられました。半世紀以上にわたる専制政治の抑圧の下で、白色テロの犠牲者たちの歴史は忌避の対象となり、忘れ去られていました。そうした中で、施水環の物語が母校の人権教育の主題として改めて取り上げられたことは、極めて意義深いことです。
さらに学びを深めよう
- 【事前学習】国立台南家斉高校と、日本統治期に台南の行政中枢を担った台南州庁(現・国立台湾文学館)、赤崁楼や延平郡王祠といった、台南を代表する史蹟との位置関係を、地図上で確認してみましょう。
- 【事前学習】海外の友人に紹介できるように、自分の出身高校の特徴や代表的な卒業生について調べ、市町村の中で学校がどのような場所に位置しているか確認してみましょう。
- 【現地体験学習】国立台南家斉高校の生徒たちは、自校の制服に強い愛着を持っています。制服の特徴や好きなところを聞き取り、自分の高校の制服と比較してみましょう。
参考資料
日本統治期の台湾の女子教育の特質や、家政系統の女学校の位置付けについては、洪郁如『近代台湾女性史―日本の植民地統治と「新女性」の誕生』(勁草書房、2001年)が参考になります。国立台南家斉高校の歴史について理解を深めるには、同校の創立100周年特設ホームページ「家傳世紀 齊綻風華」(中国語)が役立ちます。施水環については、戦後の戒厳令下で国民党政権によって行われた政治的迫害である白色テロの女性被害者に焦点を当てた台湾映画『流麻溝十五号』が参考になります。この映画の原作は、1950年代の台湾で思想犯として緑島に収監された女性たちの証言を集めた曹欽栄による同名の書籍です。
- ウェブサイト
- 公式
https://www.ccsh.tn.edu.tw/
(中国語・英語)
- 国際教育交流特設ページ
https://sites.google.com/ms2.ccsh.tn.edu.tw/ccsh-international-exchange/%E9%A6%96%E9%A0%81-home
(中国語・英語)
- 所在地
- 台南市中西区健康路一段342号
- 特記事項
- 高校は一般公開されていません。同校との交流を希望される場合は、事前に、直接同校、またはSNET台湾事務局にお問い合わせください。
