佳楽水(陳麒文提供)

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佳楽水

佳楽水

大海が育んだ海神の楽園

屏東県に位置する佳楽水は、もともと台湾語で「高い場所から落ちる水(滝)」を意味する「佳落(洛)水」といいましたが、「平和で楽しい」という意味をこめて「佳楽水」と改められました。山海瀑布(滝)とも呼ばれています。自然豊かな景勝地であり、その独特な地質景観で知られています。湖、滝、そして奇妙な造形が織りなす自然の驚異ともいうべき風景をつくりだしています。佳楽水の地質景観は、滑石(かっせき)が特徴的で、滑石坂や滑石滝など、繊細な滑石によって形成された大地の芸術品と称される独特の地形を楽しめます。これらの滑石地形は独自の生態系を形成し、ここには多様な鳥類や哺乳類が生息しています。さらに、佳楽水には美しい湖があります。湖水は湖底が見えるほど透明で、山々に囲まれた幻想的な風景が広がます。湖畔の緑と湖面の反射が交わってきらめき、心地よい静けさを感じることができます。

学びのポイント

多様な地質と堆積構造

この地域は、2400万年〜510万年前の中新世に、大陸斜面に土砂が堆積する場所でした。晩中新世以降、北側からの堆積物によって大陸斜面が徐々に堆積され、三角洲状の地形が形成されました。そのため、佳楽水周辺の地質は、主に晩中新世の深海でつくられた濁流岩(タービダイト)などの堆積岩層でできており、砂岩、頁岩、砂頁岩が交互に地表に露出しています。堆積岩層には、地すべり、脱水、平行構造、斜交層理など、多様な構造が見られます。さらに、近海の環境海からもたらされる豊富な塩分が砂岩を風化させて蜂窩(ハニカム)状の風化岩やタフォニ(風化穴)などの穴のあいた地形をつくり、たいへん貴重な地形景観を形成しています。

斜交層理・漣痕(陳麒文提供)

濁流岩(陳麒文提供)

美しい海食台地と石灰岩

佳楽水の東岸には海食台地が発達し、海中にはサンゴ礁が広がっています。その下層はローシュイサンゴ岩で、蜂窩状の風景やフロッグストーンと呼ばれる石灰岩で構成される美しい自然景観が見られます。差別侵食(強度が異なる地層のうち軟らかい地層が早く風化・侵食されること)と生物の酸化分解作用、海水と岩石の作用により、石灰岩のカルシウム成分と骨材が固結した蜂窩岩も見られます。佳楽水の砂岩は、層理(層状の模様)の弱い面が縦方向に対して垂直であるため、格子状のタフォニの構造が形成されやすくなっています。台湾には、東北部の野柳、平和島、鼻頭角、南部の墾丁国立公園や佳楽水周辺に、有名なキノコ岩、蜂窩岩、タフォニなどの美しい景観が多くあります。

風化岩・タフォニ(陳麒文提供)

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】濁流岩の形成過程と堆積環境について調べてみよう。
  • 【事前学習】差別侵食の原因を調べ、日本で差別侵食によってできた地形が見られる場所を探してみよう。
  • 【現地体験学習】現地で沈積構造を観察してみよう。
参考資料
佳楽水の自然景観については、墾丁国家公園管理署の動画「大地的櫥窗─佳樂水(日本語)」で詳しく紹介されています。公式ウェブサイトでは、それぞれの堆積岩の来歴が詳しく説明されています。
台湾の地質については、山崎孝成「台湾の地質と地すべり紹介」『地学教育と科学運動』77号、2016年9月を読んでみましょう。地層の形成についての基本的な知識については、NHK高校講座「地学基礎」「第2編 私たちの地球の変遷と生物の変化 第10回 地層の形成」を見てみましょう。

(陳麒文)