外観(松葉隼提供)

エリア
テーマ

哈瑪星台灣鐵道館

哈瑪星台湾鉄道館

高雄産業発展の歴史を物語る鉄道博物館

哈瑪星台湾鉄道館は、2016年に台湾初の鉄道博物館としてオープンしました。現在では、高雄市立歴史博物館の姉妹館として、付近にある打狗鉄道故事館とともに、鉄道の街・高雄の姿を伝える役割を担っています。両館がある哈瑪星(ハマシン)エリアは、高雄のかつての中心地で、港に隣接する商業地として栄え、商品を保管する倉庫が立ち並んでいました。哈瑪星台湾鉄道館がある駁二芸術特区は1990年代までに利用されなくなった倉庫群を2000年代初頭に再利用したもので、港街・高雄の歴史を語る生き証人でもあります。館内には台湾全島の、各時代の鉄道風景を再現した台湾最大級のジオラマが展示され、館外ではミニ鉄道に乗ることもできます。

学びのポイント

台湾を代表する港の歴史を伝える

現在の台湾は、世界有数の工業国のひとつで、世界中に多くの製品を輸出しています。日本と同じく島国であり、海外との貿易には港湾を必要とします。代表的な港は北部の基隆港と南部の高雄港です。高雄港は台湾最大の貿易港で、コンテナ取扱量世界トップ20にランクインする国際的な貿易港でもあります。現在の高雄港は市街地からやや離れた工業地域にありますが、日本統治時代から1970年代までは、哈瑪星と呼ばれるエリアの倉庫がさかんに利用されていました。哈瑪星台湾鉄道館がある倉庫は、かつて台湾の主力輸出品であった砂糖の保管用に建設されたものです。これらの倉庫群は高雄港エリアの再開発と倉庫の移転に伴いしだいに使われなくなっていきました。しかし、2002年から周辺エリアがアートの展示やイベント開催を行う「駁二芸術特区」として生まれ変わり、徐々にその範囲を拡大、現在では高雄市を訪れる多くの観光客が訪れる場所となっています。

鉄道の街として

2012年、駁二芸術特区を運営する高雄市政府は、旧砂糖保管倉庫であった蓬萊倉庫を新たに借り受け、特区のエリアを拡大しました。その目玉として2014年に哈瑪星台湾鉄道館の企画が始まり、2016年に開館しました。すぐ近くには2010年に「高雄港駅」をリニューアルして旧打狗駅故事館がオープンしており、高雄市と台湾発展の歴史について鉄道を通して学ぶことができます。2つの館は高雄市立歴史博物館が所管し、高雄市の特色ある歴史と文化を伝える博物館群の一端を担っています。本館である高雄市立歴史博物館でも展示の主題として鉄道が扱われており、そこから、台湾を縦貫する鉄道の「終点」として選ばれた高雄が鉄道とともに発展してきたという意識が強くうかがえます。2017年に開業した高雄軽軌(ライトレール)は、かつて港や倉庫へ物資を輸送するのに使われていた鉄道路線の跡を利用しており、今も鉄道を活用した街づくりが進められています。

台湾鉄道発展の歴史をジオラマで

哈瑪星台湾鉄道館の展示の最大の目玉は、台湾の風景を再現した鉄道のジオラマです。台湾全土でも最大級のジオラマで、鉄道車両や建物などが、いわゆるHOゲージ(1/87)で再現されています。北は基隆、宜蘭、台北から、南は台南、高雄、屏東まで、清朝時代から日本統治時代、そして現在までの台湾の歴史をジオラマで表しています。目をひかれるのは各時代の台湾鉄道の姿ですが、駅の周辺地域や街並み、人々の暮らしの営みなど細かな部分でも随所に台湾を感じることができます。台湾を旅した経験がある人なら、ジオラマにお気に入りの景色や街並みが再現されていることにきっと驚くことでしょう。製糖や製塩、製材といった現在の台湾ではもはや見ることができなくなった産業風景、改築された旧台北駅舎なども再現されており、文字や写真だけでは伝わらない歴史も体感できます。

館内のジオラマ展示(1)(松葉隼提供)

館内のジオラマ展示(2)(松葉隼提供)

さらに学びを深めよう
  • 1.【事前学習】【事後学習】なぜ高雄市が港町、鉄道の町として発展したのかを調べてみましょう
  • 2.【現地体験学習】哈瑪星や駁二芸術特区を歩いてみましょう。なぜこの場所に大規模な港が造られたのか、考えてみましょう
参考資料
台湾の鉄道については、多くのガイドブックなどで紹介されています。 『台湾鉄道パーフェクト―懐かしくも新鮮な,麗しの台湾鉄道―』(交通新聞社、2014)、片倉佳史『台湾鉄道の旅:全線全駅路線図付き車窓ガイド』(JTBパブリッシング、2011)など。やや専門的な書籍としては、小牟田哲彦『大日本帝国の海外鉄道』(東京堂出版、2015)、 高橋泰隆『日本植民地鉄道史論 : 台湾、朝鮮、満州、華北、華中鉄道の経営史的研究』(日本経済評論社、1995)などがあります。高雄港建設の歴史については、専門書ですが、井上敏孝『日本統治時代台湾の築港・人材育成事業』(晃洋書房、2021)があります。また、哈瑪星の詳細や周辺地域については、<a href="https://taiwan-shugakuryoko.jp/spot_south/617/"target="blank"「哈瑪星」、「旧打狗駅故事館」「高雄市立歴史博物館」も併せてごらんください。

(松葉隼)

ウェブサイト
公式 https://hamasen.khm.gov.tw/jp/home01.aspx?ID=1(日本語)
所在地
高雄市鼓山区蓬来路99号