どんな施設、インフラ、工場なども、建物ひとつだけで成り立つものではありません。さまざまな用途の建築が結びついて機能を果たします。刑務所も同じこと。ここには、日本統治時代の刑務所の施設群が、全体として欠けることなく残っている、そのことがたいへん貴重なことなのです。構造も注目してほしいポイントで、多くの建物は壁を煉瓦で積み、その上に木造の屋根を架けています。屋根の骨組みは三角形を基本形とするトラス構造。林業都市としての豊富な材料、大工さんの手仕事、そして構造力学の叡知をそこに見ることが出来るのです。
日本では珍しくない木造住宅。実はそれ自体が台湾では貴重な存在なのです。高温多雨でシロアリの被害も大きい台湾では、昔から煉瓦で造る家が多く、壁も柱も木で造る建築様式は日本統治時代に普及したものでした。和風瓦の屋根、高い床、引違い窓、畳と床の間、そして雨淋板(ウーリンバン/杉板を斜めに重ねて張った外壁)などのデザインが、日式住宅の特徴です。
渡邉義孝撮影