楊子震撮影

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國立台灣歷史博物館

国立台湾歴史博物館

「認識台湾」から「展示台湾」へ―台湾の歴史を体感してみよう!

2011年10月に開館した国立台湾歴史博物館は「全ての台湾人のための博物館」を目標とし、過去・現在・未来を見つめながら、台湾の歴史に関する知識を人々に伝える役割を果たすための施設です。2021年にはリニューアルオープンし、より充実した台湾史の学びの場となっています。国内外史料の発掘、保存価値のある日用品の収集、教育的な展示などによって、新しい台湾像を提示しようとしています。さらに、台湾国内の様々な族群(エスニックグループ)や多種言語の壁を乗り越え、台湾における社会的弱者との共存、自然環境の保全、人権教育の普及などに寄与しようとしています。

学びのポイント

国立台湾歴史博物館のテーマは?

同館は展示運営と研究活動を進めるほか、パブリックヒストリーの構築に特に力を注いでいます。常時展示のほか、特別展示も定期的に行っています。台湾に暮らす人々の記憶を掘り起こし、日々の生活の細部を注意深く観察し、これまでの記録や公文書の中では見落とされ、忘れられがちだった部分を史料として収集し、多様な歴史のイメージの再現を試み、国内外の参観者に提示しようとしています。
同館は「台湾をめぐる対外関係」、「台湾における各エスニックグループの関係」、「台湾の近代化」を三大テーマとして掲げ、これらに沿って展示計画を立ててきました。史料の収蔵と保存のみを目的とするのではなく、研究を深めるとともにその成果を発信し、台湾の歴史研究をより広く、より深くしていくことをもめざし、推進しています。

台湾歴史早わかり①

東西海上交通の中継貿易拠点としての台湾
大航海時代、香辛料を求めてアジアへやってきたポルトガルの船員は、航海の洋上で緑の美しい島を目にします。台湾は昔から美称で「フォルモサ」(美麗島)と言われていますが、その由来はまさにポルトガル語です。しかし、ポルトガルは台湾に上陸することはなく、17世紀に入りオランダがこの島に拠点を築くことになります。1624年、世界初の株式会社であったオランダ東インド会社は台湾に進出し、現在の台南市にゼーランジャ城(安平古堡)及びプロヴィンシャ城(赤崁楼)を築きました。やや遅れてスペインも台湾北部に進出しましたが、オランダ東インド会社はその勢力を駆逐し、バタヴィア(現在のジャカルタ)から日本や中国へ向かう航路の寄港地として台湾を40年ほど支配しました。のちに台湾からオランダを追い出した明の残存勢力だった鄭成功の軍勢は、元々中国沿岸で活動し、東アジアの海上で活躍していた半ば海賊でもあった海商の勢力でした。

日本による植民地統治支配
日清戦争の戦果として、1895年に日本が台湾及び澎湖諸島を植民地として獲得し、その統治は1945年まで約半世紀に及びました。植民地統治中の台湾では「西来庵事件」(1915年)や「霧社事件」(1930年)などの抗日運動が鎮圧されましたが、インフラストラクチャーの代表とも言える「嘉南大圳」の水利工事(1930年)や日月潭の水力発電所(1934年)も残されています。「大正デモクラシー」を含め近代文明の洗礼がもたらされた一方、「皇民化運動」などの同化政策も強要されました。日本の台湾統治を一言で評価することは極めて難しいですが、同館ではそのダイナミックな時代の台湾社会を様々な観点から展示し、日本による「植民地統治の正/負の遺産」を理解させ解釈しようとしています。例えば、同館で人気のアトラクションでは、復元された植民地時代の電車車両に乗ると、実際に電車に乗ったように動き、現在から出発してどんどんタイムスリップしていく映像が車窓のスクリーンに流されます。

山﨑直也撮影

台湾歴史早わかり②

第二次世界大戦後の台湾
第二次世界大戦後、中華民国政府が台湾を接収すると、戦前植民地台湾に在住していた日本人は、そこで生まれ育った二世や三世も含めて、ほとんどの人が日本本国に引き揚げました。その後、中国国民党と中国共産党による内戦の結果、1949年には中国国民党政権が台湾に撤退します。アメリカの支援を受けて、国民党政権は台湾で長期にわたり軍事統治を行いました。100万人にのぼる軍人と民間人が中国大陸から台湾に流入したことに加え、政府の強力な推進によって、中国の伝統文化が台湾社会に溶け込んでいきます。1970年代以降、政府はインフラ建設を効果的に推し進め、アメリカ、日本からの資本と技術を呼び込みます。経済の変化に柔軟かつ効率的に対応する中小企業の存在と、家庭で受託生産を行う労働形態が相まって、台湾は世界の産業チェーンの一角を占めるようになります。その後、国際情勢の変化により、新しい世代による民主化運動が巻き起こり、政府は次第に直接民主国家へと姿を変えていきます。選挙、環境保護、ジェンダー、コミュニティづくり、各エスニック・グループ文化の保存など、台湾の人々は様々なテーマで熱心に社会参加をしています。展示を通じて台湾の活発な社会の雰囲気を感じることができるでしょう。
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さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】世界史の窓「オランダ東インド会社」を読み、大航海時代のアジアにおけるオランダの活動について基礎知識を整理しておきましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】日本史、世界史の教科書における台湾に関する記述を確認し、台湾の歴史教科書における日本に関する記述と比較してみましょう。台湾の歴史教科書の日本語版として、薛化元編、永山英樹訳『詳説台湾の歴史 台湾高校歴史教科書』(雄山閣、2020年)が出版されています。
  • 【現地体験学習】 同館の展示に「日本」の存在がどのように描かれているのか観察し、その意味を考えてみましょう。
参考資料
国立台湾歴史博物館については、動画「おうちで楽しもう台湾の博物館 第10回 国立台湾歴史博物館」に紹介されています。同館が発信したい台湾社会の多元性及び自己認識の変遷については、周婉窈『増補版 図説 台湾の歴史』(平凡社、2013年)や赤松美和子・若松大祐編集『台湾を知るための60章』(明石書店、2016年)が事実関係の確認や時間軸の把握に役に立つでしょう。薛化元編、永山英樹訳『詳説台湾の歴史 台湾高校歴史教科書』(雄山閣、2020年)を読むと、台湾の高校生がどんな風に台湾の歴史を学んでいるか知ることができます。同館の見学に合わせて台南市周辺を散策したい方に一青妙『わたしの台南』(新潮社、2014年)や四方田犬彦『台湾の歓び』(岩波書店、2015年)をお勧めします。滞在経験者による現地観察が面白く、同館展示の背後にある脈動を感じることができます。出発前あるいは旅行の後、読書を通じて同館展示の関連知識を深めたい方には、大東和重『台湾の歴史と文化』(中央公論新社、2020年)の付録案内が選書の参考になります。「台南を見ると台湾がわかる」のはなぜか?SNET台湾のYouTube番組「台湾修学旅行アカデミー 第7回 台湾Area Studies~台南篇~」(講師:大東和重)も合わせてご視聴ください。

(楊子震)

ウェブサイト
公式https://www.nmth.gov.tw/jp/ 台南旅遊網(台南市政府観光旅遊局)https://www.twtainan.net/ja/attractions/detail/4899
所在地
台南市安南区長和路一段250号