大天后宮 大天后宮

台湾の漢人系信仰文化で最もポピュラーな媽祖を祀る

黒羽夏彦撮影

大天后宮は台南の中心部、赤崁樓の南側にあります。台湾で最も由緒ある媽祖(航海安全の神様)廟とされています。「廟」とは神様を祀る建物のことですが、一つの廟にも実は様々な神様が祀られています。例えば、観音様が祀られており、仏教も混ざっていることが分かります。すぐ隣の祀典武廟も、関帝(三国志で有名な関羽)を祀ったいわゆる関帝廟として有名です。廟に入ったら天井を見上げてみましょう。多種多様な言葉が書きこまれた額がたくさん掛かっていますが、これを匾額(へんがく)と言います。清代の歴代皇帝や戦後台湾の総統をはじめ、様々な人々から署名入りの匾額が贈られました。大天后宮には日本人が贈った匾額も掛かっているので、自分の目で確認してみましょう。

学びのポイント

いつからあるのですか?

鄭氏政権の時代、赤崁樓の南側には明朝の皇族である寧靖王の邸宅がありました。1683年、鄭氏政権が清朝によって滅ぼされる直前、寧靖王はこの邸宅で自殺してしまいます。翌年、清朝の軍勢を率いる将軍・施琅が旧寧靖王邸で媽祖を祀ったのが大天后宮の始まりです。その東隣には鄭氏政権の時代から関帝廟があったと言われていますが、清代には祀典武廟と呼ばれるようになりました。「祀典」とは政府が祀る廟のことです。ちなみに寧靖王の五人の妃も自殺し、彼女たちは五妃廟(台南市中心部の南側にあります)に祀られました。

大天后宮で祀られている媽祖というのはどのような神様ですか?

媽祖はもともと実在した女性を神格化したものと言われています。宋の時代、福建省に生まれた林黙娘は神通力で奇蹟を起こし、死後は航海安全の神様として祀られました。その後、歴代政府からも崇敬され、贈られた位階に応じて天妃、天后、天上聖母など様々な呼び名があります。林黙娘の出身地である福建省は海洋交易に従事する人が多かったので、媽祖信仰は中国大陸沿岸各地に広がりました。台湾には福建省にルーツを持つ人が多く、祖先はみな危険な海を渡って来たので、媽祖は台湾でも篤く信仰されています。

黒羽夏彦撮影

「武廟」に祀られている関帝というのはどのような神様ですか?

関帝は三国志で有名な武将・関羽のことです。関羽は信義に篤かったので、関帝信仰は政府からも重視され、清代には「武廟」として祀られるようになりました(ちなみに、「文廟」は孔子廟を指します)。関羽は文衡帝君(関聖帝君)という学問の神様でもあるほか、商売の神様としても知られています。関羽の出身地・山西省は塩商人が有名で、彼らは旅先で関羽を祀る廟を建てました。こうした風習が商人の間で広まったため、世界各地の中華街には必ず関帝廟があります。

さらに学びを深めよう

  1. 【事前学習】【事後学習】媽祖や関帝は日本でも祀られています。どこで祀られているのか、調べてみましょう。
  2. 【現地体験学習】大天后宮には、媽祖以外にも多くの神様が祀られています。媽祖以外にどのような神様がいるか、調べてみましょう。
  3. 【現地体験学習】匾額や石碑を現地で実際に見てみましょう。

参考資料

台湾の漢人系住民の信仰は中国大陸にルーツがあります。中国大陸の神々について一通り知りたい場合には、窪徳忠『道教の神々』(講談社学術文庫、1996年)、二階堂善弘『中国の神さま──神仙人気者列伝』(平凡社新書、2002年)が便利です。関帝信仰については渡邉義浩『関羽──神になった「三国志」の英雄』(筑摩選書、2011年)が参考になります。大天后宮と祀典武廟には様々な神様が祀られていますが、月下老人(縁結びの神様)もいます。伊藤龍平・陳卉如『恋する赤い糸──日本と台湾の縁結び信仰』(三弥井書店、2019年)は縁結びの神様をテーマとした日台の比較文化研究ですが、月下老人を切り口とした台南の廟の案内書として読むこともできます。「台南を見ると台湾がわかる」のはなぜか?SNET台湾のYouTube番組「台湾修学旅行アカデミー 第7回 台湾Area Studies~台南篇~」(講師:大東和重)も合わせてご視聴ください。

(黒羽夏彦)

ウェブサイト
交通部観光局https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003119&id=5707 台南旅遊網(台南市政府観光旅遊局)https://www.twtainan.net/ja/attractions/detail/4789
所在地
台南市中西区永福路二段227巷18号