醒村(倉本知明氏提供)
岡山醒村文化景觀公園
岡山醒村文化景観公園
歴史薫る岡山区の公園―岡山醒村文化景観公園と岡山公園―
岡山区は高雄市北部に位置する古い街です。高雄メトロの岡山駅から西に2キロほど歩いた場所にある醒村は、元日本海軍の高雄海軍航空隊の宿舎とその関連施設でした。戦後は中華民国空軍の宿舎として利用されましたが、2017年に、岡山醒村文化景観公園として生まれ変わることになりました。2015年には、中華民国空軍のパイロットとその恋人の視点から中台両岸の激動の歴史を描いたテレビドラマ『一束の緑』のロケ地となったことで、一躍有名になりました。岡山醒村文化景観公園から北東方向へ2キロほど進むと「老街」と呼ばれる古い街並みが見えてきますが、その老街に囲まれた場所が岡山公園です。日本統治時代、当地には岡山神社が建てられており、岡山公園内にある寿天宮では当時つくられた狛犬や神輿などを見学することができます。
学びのポイント
岡山の航空基地がつくられた目的は?
岡山の高雄海軍航空隊は、日中戦争期から太平洋戦争期にかけて、中国の都市や南洋各地への戦略爆撃を実施する目的のため、日本海軍の陸上攻撃部隊基地として開設されました。1942年10月には第七五三海軍航空隊と改称して南洋作戦にのり出しましたが、1944年7月に戦力の消耗を理由に解散、その後は終戦まで再び高雄海軍航空隊としてパイロットの育成と訓練に務めました。高雄市は第二次世界大戦のとき、台湾で最大の空襲被害を受けた都市ですが、同時に他国に対して最大の空襲被害を与えた都市でもありました。戦後は「大陸反攻」を掲げる中華民国空軍に接収され、その宿舎として長く使われることになりました。先述したテレビドラマ『一束の緑』では、そんな時代に翻弄された中華民国空軍のパイロットたちとその家族の物語が描かれています。ドラマの原作は台湾を代表する作家白先勇の短編小説集『台北人』に収録されています。
岡山神社はどんな神社だった?
岡山神社が現在の岡山公園に建立されたのは昭和10年(1935年)、「国民精神作興ニ関スル詔書」の公布10周年を記念して建設が計画されました。その祭神として、乙未戦争(1895年)のときに病死した北白川宮能久親王に加え、天照大神、明治天皇、開拓三神(大国主命、大己貴命、少彦名命)が選ばれました。戦後、日本統治時代に建てられた神社はあらかた取り壊されてしまい、1949年には岡山神社のあった場所にも新たに岡山寿天宮が建設されました。現在は、岡山公園の入り口に往時を思わせる真っ赤な鳥居が再建され、かつて岡山神社があった岡山寿天宮に二体の狛犬と神輿、それに手水舎などが保存されています。また、岡山区はネジの生産としても知られ、寿天宮廟内の神像はすべてネジを使ってつくられていることでも有名です。
寿天宮の神輿(倉本知明氏提供)
さらに学びを深めよう
- 【事前学習】【事後学習】白先勇の短編小説『一束の緑』を読んで、当時眷村に暮らしていた外省人の生活やその望郷意識について考えてみましょう。
- 【事前学習】【事後学習】岡山神社に祀られていた北白川宮能久親王がどんな人物か調べてみましょう。
- 【現地体験学習】岡山寿天宮の境内を参観して、日本統治時代につくられた狛犬や神輿などを見学しましょう。
参考資料
岡山醒村文化景観公園がロケ地となった『一束の緑』の原作小説は、白先勇、山口守訳『台北人』(国書刊行会、2008年)に掲載されており、日本語で読むことができます。また、台湾国内にある神社に関しては、金子展也『台湾に渡った日本の神々』(潮書房光人新社、2018年)などに詳しく述べられています。
- ウェブサイト
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高雄市政府文化局(岡山醒村文化景観公園)https://www.khcc.gov.tw/rwd_home03.aspx?ID=$6102&IDK=2&EXEC=D&DATA=708
(中国語)
高雄旅遊網(岡山公園)https://khh.travel/zh-tw/attractions/detail/62(中国語)
公式(岡山寿天宮)https://www.gsstk.org.tw/(中国語)
- 所在地
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高雄市岡山区醒路88号
- 特記事項
- 岡山寿天宮を参観する際は、参拝者の邪魔にならないように気を付けて下さい。