藤岡達磨撮影

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六合夜市

六合夜市

あらゆるものを貪欲に取り込んで高雄化するローカル文化生成の現場

六合観光夜市は地下鉄美麗島駅の付近、台湾鉄道高雄駅、高雄港からもほど近い、高雄市の中心部に位置する観光夜市です。六合路2段の全長350mの街路には、夕方の5時以降になると180店舗の屋台が立ち並びます。夜市は年中無休で、毎日朝の6時まで営業しています。アクセスの良さから、地元の人々だけでなく、台湾各地や海外からも広く観光客が訪れ、とても知名度の高い夜市です。

学びのポイント

多元性が地域性でもある港町高雄の代表

六合観光夜市は、1920年代の高雄港の発展の際に、澎湖と台南からの流入民が中心となって南の愛河付近に夜市が形成され、その規模が大きくなって混雑したため、現在の場所に移ったことに由来し、「大港埔夜市」と呼ばれるようになったものです。1950年代以降、台湾最大の貿易港である高雄港には、各地の人が流入するとともに食文化が伝わりました。水餃子、牛肉麺、蚵仔煎など台湾の外からの料理が目につき、2000年代以降はグローバル化により、ビーフステーキやトルコアイスなど世界各国の食文化を取り入れた夜市となっています。1920年代以降では台南、澎湖の諸文化、1950年代以降では中国大陸各地からの文化、そして2000年代以降には世界各国の文化が取り込まれ、それらが現地の高雄人の嗜好に合わせて変化している様子は、港町高雄の懐の深さとしたたかさを示しているようです。

藤岡達磨撮影

観光夜市化の光と影

観光夜市化は1990年代頃から台湾全土で実施された政策です。それは、非公式経済として営まれていた夜市を公的セクターに変え、公共衛生や都市秩序に適合した存在へと変えるための方法でした。その結果、夜市の環境は整備され、衛生や周囲の環境にも配慮されるようになりました。しかし、観光夜市化は夜市に負の影響もおよぼしています。もともと六合夜市は公共交通機関でのアクセスの良さから、観光客に好まれやすい夜市でした。特に高雄は国際空港も付近にあり、海外からの観光客が訪れやすい都市でした。一般に、一度だけ店を訪れて二度と来ないかもしれない観光客と、日常的に店を利用する地元の人との間では需要の構造が異なります。観光客は、その場所で一番有名で話題になる商品のみを求め、他の商品には興味を示しません。また時間に制約があるため、多少高価でもそれら特定の商品を買い求めます。海外からの観光客の需要に応えた結果、六合観光夜市の商品の多様性は他の夜市と比較して乏しくなり、商品は高価になりました。2020年のコロナ禍の際に、海外からの観光客が来なくなった結果、六合夜市の客足が少なくなったことが現地の新聞で度々取り上げられましたが、このことからも地元の人間が六合観光夜市に行かなくなってしまったことがわかります。 藤岡達磨撮影

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】六合観光夜市の発展は、高雄港の発展と軌を一にしています。高雄港の整備と発展の歴史について、いつ、誰が、どんなことを行ったのか調べてみましょう。 中央研究院人文社会科学研究中心地理資訊科学研究専題センターがGooglemapと昔の地図を比較できるウェブサイト「高雄市百年歷史地圖」 を作っていますので、こちらのページを開き、左下から四番目にある「図階」をクリックして、昔の地図と比べてみてください。
  • 【現地体験学習】【事後学習】六合観光夜市は国際色がとても豊かな夜市です。夜市を訪れてそこで売られている商品がもともとどこの食べ物だったのか調べてみましょう。また、オリジナルの食べ物と売られていた食べ物を比較して変化した点を考えてみましょう。
  • 【現地体験学習】夜市のお店にはいろいろな国の人が訪れます。看板やメニューが何語で書かれているか調べ、書かれている内容についても調べてみましょう。
参考資料
夜市の場における文化的価値の構成については以下の論文を参照してください。藤岡達磨「文化商品の国境を越えた移動によるハイブリッドな文化価値の構成:台湾への日本ラーメン屋台の移動・適応・受容の過程から」(『海港都市研究』12号、神戸大学大学院人文科学研究科海港都市研究センター、2017年) 夜市についての専門的に知りたい方は、藤岡達磨「想像の共同体の現実化の場所としての夜市 : 社会的余暇活動による経験の共有に注目して」 (『社会学雑誌』第33号、2017年)を読んでみましょう。

(藤岡達磨)

ウェブサイト
交通部観光局 https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003121&id=2245
所在地
高雄市新興区六合二路