西本願寺廣場 西本願寺広場

台湾と日本の人々の生活の記憶が重なり合う公共空間

松金公正提供

植民地統治期に台湾で布教を展開した日本仏教は8宗14派に及びます。西本願寺広場は、京都の西本願寺を本山とする浄土真宗本願寺派が1901年以降布教の根拠地とした台湾別院(1929年までは台北別院)の跡地を整備した公共空間です。1931年に落成した本殿(1975年に焼失)は、植民地期において台湾最大規模の木造宗教建築物でした。戦後、日本人僧侶が引き揚げた後、1949年に国共内戦で国民党関係者が台湾に流入してくると、旧本殿は新興宗教・理教の本部となり、旧境内はバラックで溢れる眷村(中国大陸から台湾に渡ってきた軍人とその家族の生活の場)へと変貌します。2005年以降、不法建築を撤去した上で、鐘楼、樹心会館、輪番所、本殿台座などが修復され、現在の姿になりました。

学びのポイント

植民地期に西本願寺は台湾で信徒を獲得することに成功しましたか?

西本願寺は植民地期当初、漢民族に向けて積極的に布教を行いましたが、僧侶の妻帯、肉食を可とする浄土真宗は、僧侶の非婚、菜食が大原則の台湾の仏教信者にとって全く受け容れ難いものでした。また、総督府も漢民族の信仰に積極的に介入しませんでした。その後、日本本土から台湾に渡る人々(内地人)が徐々に増加すると、葬儀や法事の需要が増え、西本願寺は布教の中心を内地人にシフトしました。他方、台湾の漢民族仏教徒の多くが禅宗信者であったこともあり、臨済宗や曹洞宗などの禅宗は、一定の影響力を与えることができました。

どうして西本願寺の遺構が保存されることになったのですか?

近年、植民地期の建築物が古跡や歴史的建造物に指定されるようになりました。しかし、決して日本のものだから保存されているわけではありません。西本願寺の場合、本殿は落成から焼失までの44年の中で、日本の仏教施設として用いられていたのはわずか14年でした。また、旧境内は1949年から2005年まで50年以上にわたり眷村として使われてきました。つまり、西本願寺広場は、さまざまな理由でかつてこの地にやってきた日本、中国大陸の人々、またそれを見つめてきた台湾の人々の生活の記憶が重なり合う場であり、それこそが台湾の歴史を具現するものだからこそ、保存する価値があるとみなされているのです。

建物は修復後どのように使用されていますか?

近年、台湾では歴史的建造物をリノベーション(改修)し、新たな価値を創造するという試みが積極的に進められています。西本願寺広場の場合、宗教をテーマとする公共空間とすることにより、繁華街に憩いの場を設けています。歴史的建造物に指定された本殿台座は、台北市立文献館による歴史展示スペース、図書館として用いられています。別院の代表者たる輪番が居住した輪番所は茶芸館となっており、畳、縁側を備えた木造建築の中で「日本」を味わえる空間となっています。樹心会館は元幼稚園や社会教育の場であったことを考慮し、市民が活用できる多目的ホールとなっています。

松金公正提供

さらに学びを深めよう

  1. 【事前学習】【事後学習】日本統治期の総督府の宗教政策について調べてみましょう。 【事前学習】【事後学習】日本にも台湾にも仏教の信者がいますが、両者にはいろいろな差異があります。どのような違いがあるでしょう。 【事前学習】【現地体験学習】西本願寺の近隣に東本願寺、真言宗、日蓮宗が植民地時代に建てた寺院がありました。現在どうなっているか、台北市立文献館で調べてみましょう。
  2. 【事前学習】【事後学習】日本にも台湾にも仏教の信者がいますが、両者にはいろいろな差異があります。どのような違いがあるでしょう。
  3. 【事前学習】【現地体験学習】西本願寺の近隣に東本願寺、真言宗、日蓮宗が植民地時代に建てた寺院がありました。現在どうなっているか、台北市立文献館で調べてみましょう。

参考資料

植民地期の台湾における日本仏教については、松金公正「植民地台湾の仏教」、蓑輪顕量編『事典日本の仏教』(吉川弘文館、2014年)で概略を知ることができます。さらに専門的知識を深めたい方は、柴田幹夫編『台湾の日本仏教―布教・交流・近代化』(勉誠出版、2018年)、中西直樹『植民地台湾と日本仏教』(三人社、2016年)を読んでみましょう。眷村については、長谷川啓之監修『現代アジア事典』(文眞堂、2009年)上水流久彦「眷村(老兵)」に簡潔に書かれています。萬仁監督の映画『油麻菜籽』には、バラックで埋め尽くされる西本願寺広場の昔の様子が出てきます。SNET台湾のYouTube番組「台湾修学旅行アカデミー 第6回 建築から知る台湾」(講師:上水流久彦先生)では日本統治期に建てられた建築の見方について学ぶことができます。合わせてご視聴ください。

(松金公正)

ウェブサイト
台北旅遊網(台北市政府観光伝播局)https://www.travel.taipei/ja/attraction/details/956
所在地
台北市万華区中華路一段174号