赤松美和子撮影

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烏来泰雅民族博物館

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烏来タイヤル民族博物館

豊かな自然環境に育まれた先住民族タイヤル文化の学習・交流拠点

烏来は、台北市に最も近い先住民族の村です。Ulay(ウライ、烏来)とは、タイヤル民族の言葉で「温泉」を意味します。烏来のバス停で降りて山へ続く道は、観光客向けの店が立ち並ぶ昔ながらの商店街で、「烏来老街」と呼ばれる烏来の玄関口です。その入り口近くに、烏来タイヤル民族博物館があります。ここでは、烏来一帯の自然環境、この地の先住民族であるタイヤルの伝統的な生活、宗教、歴史などについて、貴重な資料を見学しながら学ぶことができます。加えてタイヤル民族の歌や踊りの実演、機織りや小物製作の体験コーナーもあります。烏来のタイヤルの人々自身が展示や解説を担っており、タイヤル民族の視点からその文化や歴史を学び、彼らと交流できる貴重な場です。

学びのポイント

タイヤル民族とは?

台湾には、中国大陸から移民が到来するずっと前から、独自の言語と文化をもつ多様な民族が暮らしてきました。北部から中部の山中に居住してきたタイヤル民族(Atayal、泰雅族)もその一つです。タイヤル語で「ガガgaga」と呼ばれる祖先から伝わる知恵や規律に従い、19世紀末まで小集団ごとに焼畑農耕と狩猟に依拠して自律的生活を営んでいました。女性は機織り、男性は狩猟や戦闘での能力が一人前の証とされ、成人儀礼としてイレズミを入れる慣行もありました。日本による植民地化後、イレズミなどの文化的慣行の多くが消失、変容しましたが、近年、機織りの文化は烏来の女性たちによって復興されつつあります。

烏来泰雅民族博物館が設立された経緯は?

1990年代から、烏来では温泉を主軸とする観光産業が発展してきましたが、観光客がこの地に古くから暮らすタイヤル民族の文化や歴史に直接触れる機会や場所は、ほとんどありませんでした。そこで烏来の先住民族であるタイヤルの人々を尊重し、その文化や歴史を学ぶ場として、2005年にこの博物館が設立されました。

烏来で他に訪れるべき場所は?

落差約80メートルを誇る烏来の滝(烏来瀑布)は、背後の峻険な山とともに烏来の自然の壮大さを実感できます。今日の観光用トロッコ列車(烏来台車)は、日本統治期に開発された林業の木材運搬用軽便鉄道が前身です。林業の歴史を主題とする「烏来林業生活館」とともに、烏来の林業史を学べます。その付近には、タイヤル女性の機織り工房「ユカイ織物工房(尤蓋織藝工作坊・東昇特産店)」、少し奥には第二次世界大戦で日本軍に従軍して亡くなった先住民族を慰霊する「烏来高砂義勇隊メモリアル・パーク(烏来高砂義勇隊主題紀念園区)」があります。
さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】台湾の先住民の文化と歴史、特に日本との関係について調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】タイヤル民族の機織りの特徴、材料、文様について調べてみましょう。
  • 【事後学習】日本の先住民族アイヌに関係する博物館について調べてみましょう。または、タイヤル民族の文化的特徴についてより詳しく調べてみましょう。
参考資料
台湾の先住民族の歴史や文化については、赤松美和子・若松大祐編『台湾を知るための60章』(明石書店、2016年)の第1章「歴史①石器時代から16世紀まで 地理・自然・先史」、第6章「エスニック・グループ」、第24章「原住民」で概要を知ることができます。また、各民族の文化の特徴などについては、台北駐日経済文化代表処ウェブサイトの「台湾の原住民族文化」、順益台湾原住民博物館ウェブサイトの「台湾原住民族について」が参考になります。やや専門的ですが、烏来の女性たちによる機織り文化の復興については、王雅萍「部落大学カリキュラムから烏来女性のエンパワーメント、工芸復興への展開」(『日本台湾学会報』22号、2020年6月)をぜひ読んでみてください。また、タイヤル民族の文化と歴史の専門書として、山路勝彦『台湾タイヤル族の100年』(2011年、風響社)があります。

(宮岡真央子)

ウェブサイト
公式https://www.atayal.ntpc.gov.tw/ 交通部観光局https://jp.taiwan.net.tw/m1.aspx?sNo=0003016&id=166 新北市観光旅遊網(新北市政府観光旅遊局)https://tour.ntpc.gov.tw/ja-jp/Attraction/Detail?wnd_id=115&id=111518
所在地
新北市烏来区烏来里烏来街12号
特記事項
事前連絡により、館内解説や交流活動などについて相談、予約が可能です。