行天宮

行天宮は設立以来、金紙（神様に奉納するお札）を燃やさない、生贄の家畜を供物にしない、賽銭箱を置かないことにしてきました。これは貧富によって信仰が妨げられてはいけないという社会的弱者への配慮という行天宮の一貫した方針によるものです。そのため、「收驚」を受けた人からも、お礼は受け取りません。一方、参拝者からの要望を配慮して、大香炉や供物台を準備していました。しかし、参拝者は化学物質を含む線香をあげ、時には供物を持ち帰らないこともあるため、大気汚染と食品ロスは、台湾の宗教施設にとって大きな課題となっていました。このため行天宮は関羽に宗教的儀式で同意を得た上で、大香炉とテーブルの撤去を実行したのです。他方、近隣で線香や供物を売る人々は商機を失うこととなり、新たな課題が発生しました。関羽は商売の神様でもあるので、どう解決するのか注目です。

松金公正提供

台湾の宗教団体は社会との連携を重視する傾向にあり、行天宮も貧困層、女性、子供、老人といった社会的弱者へ配慮しつつ、文化、教育、医療、宗教、慈善の５つの観点からさまざまな課題に取り組んでいます。文化・教育面では、台北行天宮附設玄空図書館を市内４か所に設立し、女性専用の閲覧室や親子図書館を設けています。また、困窮家庭への奨学金給付や女性、老人に対する生涯学習、リカレント教育も行っています。医療面では、医療機関未整備地域であった別宮（行修宮）のある三峡の地域医療に貢献するために1998年に恩主公医院を設立し、2016年には高齢社会への対応として老人ホームを開設しています。これらの活動を信者たちによるボランティア活動が支えています。

松金公正提供

行天宮は、主神である関聖帝君（関羽の神としての名前。以下同じ）のほか、孚佑帝君（呂洞賓）、司命真君（張単）豁落霊官（王善）、忠武穆王（岳飛）を本殿中央に祀っています。これらの神々は、人々に特に恩恵を与えてくれる神様として「五聖恩主」と呼ばれるため、別名を恩主公廟といいます。また、最も重要な主神が関聖帝君であるため、関帝廟とも呼ばれることもあります。そのため、起源を1887年に清朝によって設置された関帝廟（台北武廟）とすることがあります。