沖縄出身者たちは、独特の素潜り漁で海産物を捕るだけでなく、三線(沖縄に特徴的な三味線)を持ち込んでいました。このため、社寮島の沖縄出身者の集落は、他府県出身の人たちからは、独特の風情が漂う場所として受け止められていました。「異国情緒」という表現を当てた文章も残されています。半面、特異な文化や生活習慣は沖縄出身者に対する偏見や差別につながり、台湾の人たちの沖縄出身者に対する共感を呼び起こしたことから、両者の間に親しみの感情が湧いたといいます。
主要な海産物として、寒天草(石花菜)が挙げられます。沖縄出身の漁民は小さな舟で沖に出ると、素潜りで寒天草を捕っていたのです。社寮島の住民と新参者の沖縄出身者との間でいさかいが起きることもありましたが、沖縄出身の漁民はやがて寒天草を採る方法を地元の人たちに伝えるようになり、両者の対立関係は緩和されていったといわれています。
暑い季節に入ると、島のあちこちで「石花凍」という看板を見かけるようになります。寒天草(石花菜)を使った冷菓の名前です。安価なローカルフードで、黒糖などを使ったシロップをかけて食べると、ひんやりとして美味です。島の人たちや地元の行楽客と一緒に味わってみると、土地の雰囲気に溶け込むことができるかもしれません。
カイニンソウを使った冷菓「石花凍」。黒蜜をかけて味付けをしているところ、松田良孝撮影