楊智寧提供

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國立台灣師範大學

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国立台湾師範大学

日本統治期の旧制高校の軌跡と今

昔の国立台湾師範大学は、中等教育教員の養成と台湾教育政策の研究で知られていましたが、1990年以後は、民主化運動の展開により、元の機能を維持しつつ、総合大学に転換しています。国立台湾師範大学のルーツは、日本統治期の1922年に設立された台北高等学校です。台北高等学校は終戦直後に台北高中に改編されましたが、1年後再び改編され、同じ場所で台湾師範学院として新設されました。その後、台湾師範学院はいくつの改編を経て、現在の国立台湾師範大学になりました。国立台湾師範大学の前身である台北高校は、日本統治時代に自由自治の名をはせ、1929年にアメリカから購入した自由の鐘が行政ビルの三階に飾られています。自由の鐘を含め、元台北高校が使っていた生徒控室、講堂、行政ビルは、今も保存され、使われています。この歴史ある学校は、様々な領域で有名人を輩出しています。2020年7月末に亡くなった元台湾総統・李登輝や、直木賞を受賞した邱永漢も台北高校の卒業生です。

学びのポイント

植民地統治下の近代教育とは

1895年に台湾を領有した日本政府は、植民地統治の必要から、台湾で近代教育を推進しました。公学校の普及と識字率の向上が台湾教育の基礎になっ た一方、台湾人向けの教育機会は初等教育に限られ、学制も日本人と異なり、日本の学校には進学出来ませんでした。 1922年、新たな同化政策で日台共学を唱えた台湾総督府は、台北高校や台北帝国大学の設立を始め、台湾の中高等教育に取り組むはずでしたが、台北帝国大学、台北高校にはいずれも、台湾人学生の数を1割以下に制限するという不文律があり、台湾人学生はさらに不平等な状況に置かれ、中高等教育は一般の台湾人にとっては手の届かない存在でした。 台北高校は日本統治時代の象徴的な最エリート学校であり、入学試験の難しさで知られていました。台北高校に入学できる台湾人学生は、エリート中のエリートでした。自分の努力の成果により高等学校生という身分を得たことに加え、自由な学風に恵まれ、台北高校の台湾学生は文明知識を楽しむ機会を得るとともに、差別からも逃れられました。

楊智寧提供

2つの政権に挟まれた学校と学生

1945年の日本の敗戦で台湾は中華民国の領土になり、台湾の社会は再び激しい変化を迎えました。当時の台湾には政府と民衆の対立だけではなく、台 湾人と中国大陸からの移民のあいだでも衝突がありました。激突の頂点になった台湾人デモの二二八事件は政府に弾圧されました。台湾社会は緊張と不 安に包まれました。それは、台北高校から新設された台湾師範学院においても例外ではありませんでした。1949年3月22日、師範学院の学生が自転車を二人乗りしていたという理由で警察に取り調べられ、暴行を受けました。この事件は台湾大学と師範学院の学生の不満を招き、数百名の学生が集まって警察局の前でデモをしました。警察は世論の圧力に屈し2人の学生を釈放しましたが、この事件が共産党によるものだとしました。4月6日に警察及び軍隊が学校に侵入して数百名の学生を逮捕、うち7人が死刑に処されました。この事件は逮捕の日付から、四六事件と呼ばれます。四六事件後、戒厳令体制の下、師範学院は校内の思想教育の強化を始めました。四六事件は自由自治の台北高校から保守的な師範学校に転換する、重要なきっかけとなりました。

一大学の歴史がまさに台湾アイデンティティの歴史

1990年代以前、台湾の公立中小学校の教員のポスト配置は、国立台湾師範大学が率いる師範学校が握っていました。政府の公費補助がある上に、卒業生の就職を保障する師範学校は、日本統治期初代学務部長・伊澤修二が台湾に師範学校を導入して以来、国家とともにありました。戒厳期は、師範学校で政府寄りの保守派教員を養成し、次世代の学生教育に影響を与えました。しかし、1990年代の民主化運動により、教員養成の体系も解体され、多様な道が現れました。これをきっかけに、国立台湾師範大学は総合大学に転換し、学風も1950年代以来の保守的なものから、自由で開放的なものへと変わりました。また、民主化の過程で、台湾社会も日本統治時代の歴史を見直し、多様な視点を生み出しました。師範大学を含め、台湾が日本統治時代に設立した各高等教育機関は、長い間、日本統治時代の歴史に対しては、無視ないしは曖昧な態度を取っていました。国立台湾師範大学も、かつては1946年の台湾省立師範学院の設立を大学の歴史の起点としていましたが、近年は学生との合意により、1922年の台北高校設立時に遡り、現在は2022年の創立百周年記念活動の準備をしています。このように、改めて国立台湾師範大学の歴史を知ることは、大学のアイデンティティのみならず、同時に台湾社会民主化後のアイデンティティを探求することにも繋がります。

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】戦前の日本の旧制高校と現在の高校の地位や役割のちがいについて調べてみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】台北高等学校と国立台湾師範学院/大学の有名な卒業生について調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】国立台湾師範大学のキャンパスにある様々な建物を観察し、ちがいを見つけてみましょう
参考資料
旧制台北高等学校については、所澤潤「社会的リーダー階層と台北高等学校―台湾人生徒にとっての入試と「立身出世」 」(蔡錦堂主編『台北高等学校 創立90週年国際学術研討会論文集』、台湾師範大学台湾史研究所、2014年4月、pp.215-264)があり、台湾の出版社から陳中寧『マンガ台北高校物語』(津田勤子訳、前衛出版社、2014年)というマンガの日本語版が出版されています。また、台北高校特設サイト台北高校95周年記念特設サイトでも日本語で台北高等学校の歴史などについて紹介されていますので、ぜひ見てみましょう。

(陽智寧)

ウェブサイト
公式https://www.ntnu.edu.tw
所在地
台北市大安区和平東路一段162号