冨田哲撮影

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淡江大學

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淡江大学

港町淡水の高台に広がる美しいキャンパス。多くの卒業生が各界で活躍

新北市淡水区に本部を置く私立の総合大学で、学生数は約2万5000人、大学名は淡水で台湾海峡に注ぐ淡水河(淡江)にちなんでいます。外国語学部には日本語学科もありますが、台湾の大学の日本語学科としては規模がもっとも大きく、多くの卒業生が日本企業などで活躍しています。陽明山国家公園に指定されている大屯山火山群が約200万年前に噴火した際、今日の淡水市街地の方向に溶岩が流れこみ、先端に五つの丘が形成されました。それが虎の爪に見えるということで「五虎崗」と呼ばれます。淡江大学はそのうちの一つに位置していて、西には淡水河の河口、東には大屯山系を一望することができます。キャンパスの周囲にはにぎやかな学生街が広がっています。

学びのポイント

淡江大学は台湾で最初にできた私立大学?

淡江大学のシンボルである「宮燈教室」は、1950年に設立された三年制の淡江英語専科学校の時期に建てられたものです。同校は設立当初、台湾で高校卒業生が学べる唯一の私立教育機関でした。淡江大学が台湾初の私立大学であると言われるゆえんです。しかし今日の台湾には、国立私立を問わず、もともと中華民国期の中国大陸にあって、1950年代以降に台湾で復活したとされる大学がいくつかあります。「台湾で最初にできた私立大学」より古い私立大学が台湾にあるというわけです。また国立で、台湾大学(台北帝国大学が前身)のように日本統治期の高等教育機関を前身とする大学もあります。大学のなりたちにも台湾の歴史の複雑さが見て取れます。

「校園民歌」とは?

1976年12月3日、淡江文理学院(1958年に淡江英語専科学校から改組)で洋楽のコンサートがおこなわれました。数学科出身の歌手、李双沢がステージ上で、洋楽に慣れ親しんだ自分たちには日常生活や心情をつづる歌がないと訴えたことがきっかけとなり、「校園民歌」(キャンパスフォーク)運動がわきおこりました。彼は1977年に惜しくも急逝してしまいますが、李が作曲した「美麗島」は、今日でも人々に歌い継がれています。キャンパスの一角に、ギターをかたどった李の記念碑があります。 

「李双沢記念碑」

どうしてキャンパス内に“船”があるの?

キャンパスの中ほどに船の形をした目立つ建物がありますが、これはエバーグリーンという海運会社を創始した張栄発が、1978年に商船学科、海洋工学科の施設として寄付したものです(日本の多くの都市に乗り入れているエバー航空は、エバーグリーンのグループ企業の一つです)。当時は海運業の発展期で船員の養成が急務だったのでしょうが、その後船舶の自動化が進み、1989年に最後の卒業生を送り出して両学科は廃止されました。建物は「海事博物館」となって今日に至り、無料で一般に公開されています。 

海事博物館

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】台湾の大学教育について調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】MRT淡水線の紅樹林駅から淡海ライトレールで淡江大学駅に行き、大屯山から流れ出た溶岩が作り出した地形を車内から観察してみましょう。
  • 【現地体験学習】キャンパス周辺の学生街で、食べ歩きもかねて学生の日常生活を観察してみましょう。
参考資料
台湾の教育制度や大学教育については、赤松美和子・若松大祐編『台湾を知るための60章』(明石書店、2016年)の「第32章 教育制度―学齢社会における学校」、「第33章 大学の大衆化―狭き門から全入の時代へ」、「コラム7 大学の国際化と「留学生」―統計に見る台湾の特殊性」が理解の助けになります。吉田修一『路(ルウ)』(文芸春秋、2012年)という小説には、淡江大学の学生だったと思われる人物が主人公のボーイフレンドとして登場し、大学周辺の光景もえがかれています。同作を原作とするドラマ「路―台湾エクスプレス」(NHK、2020年)では、淡江大学で建築学を専攻していた学生という設定になっています。

(冨田哲)

ウェブサイト
 公式http://www.tku.edu.tw/
所在地
新北市淡水区英専路151号