ビルの主な建築構法には、鋼材を組合せて建てる「鉄骨造」、ドロドロのコンクリートを鉄筋と一体化させて石のように固める「鉄筋コンクリート造」、その両方の長所をミックスした「鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)」があります。高いビルはそれだけ荷重が増え、下層ほど柱が太くなるので、さまざまな工夫が必要です。そのひとつがSRCを更に進化させたコンクリート充塡鋼管構造(CFT造)。パイプ状の鉄骨の中にコンクリートを流し込み、曲げにも折れにも強い建築が造れるのです。台北101は、このCFT造を採用した、先駆的な超高層ビルといえます。
イラスト(渡邉義孝)
ユーラシアプレートとフィリピン海プレートが年間7cmという猛スピードで押
し合い、隆起しているのが台湾という島。当然、世界有数の地震多発エリアで
す。実際にこれまで台湾では、921地震など度重なる震災を経験してきました
。地震に対抗する手法には大きく分けて、硬い壁や骨組みで揺れに耐える「耐
震」、ゴム等の上に建物を建てて揺れを逃がす「免震」、そして建物内部に錘
を置いて揺れを抑える「制震」の3つがあります。台北101では「制震」を採
用。最上部の少し下あたりに、直径5.5m、重さ660tの丸い錘が吊られているの
です。これは風圧に対しても威力を発揮。最新の技術が駆使されているのです
ね。
洪淑芬提供
台北101からわずか200m南西に、ビル街とは不釣り合いな古い小さな住宅群が
残っています。ここは四四南村と呼ばれる眷村(けんそん)です。眷村とは、
日本の敗戦後、1949年以降に中国大陸から移住した人々が暮らした集落のこと
。眷村は、台北市内にもいくつも造られました。四四南村は、再開発(壊して
ビルなどに建て替えること)計画で住民が転居した後に、「歴史的な価値があ
るから文化財にしよう」との声が高まり、アートのための空間としてリノベー
ション(改修)されたのです。レトロな町並みと現代の美術が融合するユニー
クな空間として観光客に親しまれています。