移築された伝統建築の黄挙人宅(山﨑直也氏提供)
国立伝統芸術センターのエントランス(郭書瑜氏提供)
國立傳統藝術中心(宜蘭園區)
国立伝統芸術センター(宜蘭園区)
台湾の伝統文化を集めた体験型文化施設
国立伝統芸術センターには、1940~50年代の台湾の村落や台湾に暮らす漢民族の伝統文化が息づく建物が再現されています。現在も台湾で使われている旧暦に沿ってイベントを企画することや、台湾の伝統工芸体験、製品購入などもできます。 国立伝統芸術センターを訪れた人々に台湾の民俗文化を体験させるとともに、その保存と普及に大きな役割を果たしています。
学びのポイント
移築された漢民族の伝統建築
国立伝統芸術センターにある施設のほとんどは、台湾漢民族の伝統的家屋をモデルに新たに建てられたものです。ただし、例外もあります。黃挙人宅(宜蘭で初めて科挙に合格した黄纉緒の旧宅)と廣孝堂は、それぞれ1870年代と1920年代に建てられたものです。この2つの建物は、もともと宜蘭市の中心部にあり、1980年代に都市開発計画のため取り壊しの危機に直面しました。しかし、伝統文化保存のために取り壊しを免れ、この地に移築されました。移築作業では、レンガ、瓦、木材など、建物の各部分に番号を付けておき、伝統的な修復工法によって再び組み立てました。現在、この2つの建物は、台湾の伝統的な生活や祖先を祀る儀式の様子を展示する場として活用されています。
多種多様な文化体験
国立伝統芸術センターでは、様々な台湾の伝統工芸や文化活動が集約的に展示されています。台湾の伝統的な人形劇である布袋劇や舞台劇の歌仔劇、伝統楽器の演奏を鑑賞したり、染物工芸の藍染や木工芸の体験など、様々なDIYが楽しめます。台湾漢民族の伝統文化の展示だけでなく、台湾の先住民族をテーマとする「原民館」という施設もあります。近年では、先住民族と漢民族の伝統舞踊や演劇を受け継ぐ人材の育成にも取り組んでいます。
再現された古い街並みの中で様々な伝統文化に触れることができる(郭書瑜氏提供)
さらに学びを深めよう
- 【事前学習】現地で触れたい工芸の歴史を調べてみましょう。
- 【現地学習】漢民族の伝統建築の一つである閩南式建築の特徴を観察してみましょう。
参考資料
台湾のエスニック・グループについては、沼崎一郎『台湾社会の形成と変容〜二元・二層構造から多元・多層構造へ〜』(東北大学出版会、2014年)、赤松美和子・若松大祐編『台湾を知るための72章【第2版】』(明石書店、2022年)が参考になります。台湾交通部観光署のウェブサイトでは、伝統芸術センターで鑑賞・体験できる台湾の伝統芸術が写真とともに紹介されています。舞台劇については、人間国宝の陳錫煌を取り上げた鄧慧純著、松本幸子訳「『布袋戯』人形遣いの名人」(『台湾光華雑誌』、2019年3月)や映画『台湾、街かどの人形劇』(楊力州監督、2019年)で詳しく知ることができます。『みんなの台湾修学旅行ナビ』の「李天禄布袋戯文物館」の記事も参考になります。
- 所在地
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宜蘭県五結郷五濱路二段201号