館内の様子(郭書瑜氏提供)

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宜蘭縣史館

宜蘭県史館

宜蘭の歴史を伝える台湾初の郷土史料館

1992年に設立された宜蘭県史館は、台湾初の郷土史を総合的に扱う史料館です。宜蘭に関する資料の収集や保存にとどまらず、開館前から蓄積してきた活動や資源を基盤に、調査研究を継続的に行い、それを発展させている点が特徴的です。宜蘭の特色を生かした展示や講座を開催するほか、大学や研究機関とも連携し、歴史教育の実践に力を入れています。また、県史館を含む庁舎群は、宜蘭の自然環境と調和した公共建築として国際的に有名で、世界中から多くの見学者が訪れます。

学びのポイント

台湾史から見た宜蘭の郷土愛と先駆性

台湾では、日本植民統治時代は日本史、民主化以前の中華民国下は中国史がそれぞれ正史とされ、台湾の人々は自らの土地の歴史を知る機会がありませんでした。そのような状況での宜蘭県史館の設立は、台湾の歴史と文化を地方から主体的に再構築するという重要な意味を持っていました。そして、宜蘭の経験をモデルに、他の地方自治体も県史館の設立に着手し始めました。宜蘭県史館では、資料の収蔵と研究を進めるとともに、館内の空間を最大限に活用した歴史教育の実践に積極的に取り組んでいます。1階の入り口正面には特別展エリアが、右手には常設展エリアが配置されています。また、地下1階には閲覧エリアがあり、開架式図書室には豊富な蔵書がそろっています。

歴史を楽しく学ぼう

宜蘭県史館は「人と歴史が交わる空間」と自らを定義するように、「誰もがここで歴史に触れ、歴史を感じ、互いに対話しながら、自分自身のルーツや物語を探すことができる」場所です。常設展「歴史を楽しく学ぼう」は、台湾の歴史学界と実践的な協働の集大成として注目されています。インタラクティブな展示方法を通じて生徒や見学者の興味を引き出すとともに、歴史の普遍的な意味を理解し、親しみを感じられるようにしています。例えば、「歴史学者とはどのような人物でしょうか? 歴史学者になるためには、少なくとも四つのタイプの人物の特質を備えている必要がありますが、それは何だと思いますか?」という問いかけを通じて考えさせます。また、「歴史とは何か?」というコーナーでは、歴史家や文学者の言葉を交えた生徒たち文章や絵のうち特に優れた作品が展示されています。

生徒の作品の展示(洪郁如氏提供)

自然と郷土愛と建築の調和

県史館は宜蘭県庁舎の一部で、これらの建物群は日本の象設計集団による名建築として、海外からも高い評価を得ています。「建築の公園化、建築の親民化、建築の土着化」、建設当時の県知事・陳定南が示した理念であり、実際に訪れるとその巧妙な表現が体感できます。建物自体は控えめで目立たず、円形の屋根が丘陵の緑地とほぼ一体化しています。館内に足を踏み入れると、天井から入る明るい自然光、高い梁柱に施されたガジュマルのイメージ、そして漂う木の香りに魅了されます。ゆったりとしたヒノキの長椅子や階段が閲覧室に配置され、ガラスの天窓に映る青空や白い雲、窓の外で揺れる木漏れ日を心地よく眺めながら読書できるように空間が設計されています。

自然と調和する宜蘭県庁舎(郭書瑜氏提供)

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】地元の歴史博物館や郷土資料館などの施設が、学校とどのように協力し、どのような活動を行っているかかを調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】宜蘭県史館を見学し、常設展の「歴史学者とはどのような人物でしょうか?」および「歴史とは何か?」という問いに答え、展示されている台湾の生徒たちの言葉と比較してみましょう。なお、Googleレンズなどのカメラ翻訳アプリを利用すると便利です。
  • 【現地体験学習】宜蘭県庁舎全体、特に県史館を歩きながら、学びのポイントで触れている建築のコンセプトが表現されていると思うところを写真で撮り、説明してみましょう。
参考資料
象設計集団のウェブサイトには、宜蘭県庁舎の設計に関する説明があります。宜蘭の郷土史、建築、元県知事の陳定南については、栖来ひかり「たいわんほそ道~青天の下で歩く民主の聖地、宜蘭の経験を想う――県庁舎~金古路~員山機堡」(『nippon.com』2021年12月19日)が参考になります。

(洪郁如)

ウェブサイト
公式https://yihistory.e-land.gov.tw/Default.aspx

(中国語)

所在地
宜蘭県宜蘭市南津里県政北路3号