前原志保氏提供

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橘之郷蜜餞形象館

橘之郷蜜餞コンセプト館

金棗(キンカン)の加工を学ぶ観光工場

宜蘭の特産物の一つである金棗(キンカン)。その昔、人々は金棗の実がたくさんなってもそのまま放置したり、地面に落としたりしていました。橘之郷蜜餞コンセプト館の創業者の祖母である林陳阿鳳さんはその様子を見てなんとかしたいと思い、蜜餞(ミージェン)と呼ばれる金棗の砂糖漬けを作って長期間保存できるようにしました。橘之郷蜜餞コンセプト館は、林陳阿鳳さんの精神を受け継ぎ、合成添加物や香料、防腐剤などを一切使わない天然の味にこだわっています。金棗の加工を40年にわたって行ってきた工場では、蜜餞を作る設備の一部を見学することができます。また、蜜餞、ジャム、金棗ケーキなどを自分で作れるDIYコーナー(別途料金要)や、金棗茶を楽しめるカフェ、工場で作られたさまざまな商品の試食や購入ができる店舗も併設しています。

学びのポイント

果物の砂糖漬け「蜜餞(ミージェン)」の歴史

蜜餞(英語:candied fruit)は、桃、杏、梨などを砂糖に漬け込んで長期保存できるようにした加工食品です。甘さを加える調味料の歴史を遡ってみると、古代中国では蜂蜜が使われていました。砂糖の原料であるサトウキビが中国の南方で大量に栽培され、氷砂糖に加工されるようになったのは、漢の時代からです。人々はその氷砂糖を固体の蜜、「石蜜」と呼びました。台湾最古の蜜餞工場は、台南の安平という場所にある「永泰興」だと言われています。台湾はフルーツの宝庫であるとともに、サトウキビ栽培が盛んで砂糖の生産地でもあることから、蜜餞は台湾の特性を存分に生かした食べ物だと言えるでしょう。

金棗と、宜蘭という土地の特色

宜蘭では台湾全体の生産量の9割の金棗が栽培されています。宜蘭は雨が多く、土壌の水はけがよいことが金棗の栽培に適しているためです。収穫の最盛期である11月から2月は、宜蘭地方では他の農作物の休耕期間にあたるため、収穫用の労働力を確保することも難しくありません。一方、金柑から作る蜜餞が特産物となった理由は、交通の便の悪さです。宜蘭平原は四方を海と山に囲まれ、外部からの物資の輸送が難しい場所でした。現在のように鉄道や高速道路が発達する以前は、野菜や果物を新鮮なまま輸送することは困難でした。そのため、蜜餞のように長期保存に耐えられる商品が開発され、現在も宜蘭名物となっているのです。

蜜餞と漢方薬店との関係

台北では、蜜餞は迪化街と呼ばれる古い下町の問屋街で手に入れることができます。迪化街一帯は、漢方薬店が軒を連ねていることで有名です。なぜ蜜餞が漢方薬店の近くで売られているのでしょうか。それは、漢方薬の苦味を緩和するために蜜餞などの甘いものを取り扱うようになったからだと言われています。宜蘭でも100年以上の歴史を持つ蜜餞の老舗「老増寿」は、もともと漢方薬店でした。この店では、当初咳止めの漢方薬として金棗とスターフルーツのペーストを売っていましたが、その後金棗をはじめとしたさまざまな蜜餞を売るようになりました。

前原志保氏提供

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】台湾は一年を通して多種多様な果物が採れ、日本では見かけないものもたくさんあります。台湾各地でどのような果物がいつごろ採れるのか調べてみましょう。
  • 【事後学習】この工場では金棗以外にどのような果物が加工されているでしょうか。工場に併設されているショップで確認してみましょう。果物加工で日本と異なる点はあるでしょうか。
参考資料
蜜餞が漢方薬とともに売られている背景を知るには、「生薬・薬草に宿る千年の智慧」(『TAIPEI 日文季刊』第238期、2019年1月)を参照。台湾での蜜餞の歴史や昔ながらの食べ方については、「懐かしく甘酸っぱい味わい」(『台灣光華雜誌(Taiwan Panorama)』、2023年2月号)を参照。

(前原志保)

ウェブサイト
公式https://www.agrioz.com.tw

(中国語・英語)

所在地
宜蘭市梅洲二路33号

特記事項
金棗蜜餞DIYは1瓶作成で1回200元(所要時間20分)、季節のジャム作りは900元で3瓶持ち帰ることができる(所要時間50分)。金棗ケーキ作りは600元で、1人当たり6個持ち帰ることができる(所要時間60分)。9〜16時で当日受付可能だが、11人以上の団体の場合は、オンラインでの予約が必要。