国立台湾科学教育館・正面(陳秋文提供)

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國立臺灣科學教育館

国立台湾科学教育館

見て、触って、参加して、探究心の扉を開き、科学の謎を学ぼう

台北市の北部、士林夜市が有名な士林地区にある国立台湾科学教育館は、10階建ての大きな施設で、小さな子どもから大人までが楽しく科学を体験することや、科学教育の普及を目的としています。さまざまな展示を通して科学の謎を学習、理解できるように工夫がこらされています。常設展は生命科学、自然科学、物質科学、数学、地球科学をテーマとしています。建物の吹き抜けにかかる「博物館の橋」は、8階の「設計的演化(デザインの進化)」と「探索博物館之橋(博物館の橋を探索しよう)」、そして9階の「発現木材的多樣性(木材の多様性を知ろう)」の3つの展示エリアで詳しく説明されています。周辺には、天文科学館、児童公園、美侖公園があり、全体で科学、芸術、エコロジー、文化・教育、レジャーの施設が集まる「台北科学芸術園区」を形成しています。常設展はもとより、定期的に開催される特別展もおすすめです。

学びのポイント

ジェンダーから科学技術を考える

台湾のジェンダー平等の取り組みは、博物館でも展開されています。これまで科学でのジェンダー視点は軽視されてきましたが、この博物館では、科学技術の歴史を、古代からルネサンス、21世紀の現代に至るまで、ジェンダー視点からとらえ直し、なぜ女性の科学者、発明家などの誕生が難しかったのかを考えることができます。また、科学技術、健康医療、工学、環境、建築などのさまざまな分野における既存の常識を疑い、ジェンダー視点を取り入れることによる新たなイノベーションの創出についても問いかけています。そのほか、手術用医療器具におけるジェンダー視点からの研究開発などの体験学習も豊富です。

内部の展示(陳秋文提供)

半導体を知ろう

台湾科学教育館は、世界的な半導体製造装置メーカーであるアプライド・マテリアルズ台湾と協力し、半導体教育、展示に長年取り組んできました。6階の「半導体未来館」では、「展示ホール」「材料室」「製造エリア」「未来実験室」「体験学習エリア」などでさまざまな角度から半導体を紹介し、手に取って作ってみながら半導体の世界を学びます。今日半導体は、私たちの身の回りにある電子製品に使われています。半導体の歴史を振り返り、革新的な技術の急速な進展のなかで、世界でどのようにして競い合って今日の半導体が生まれたかを調べてみましょう。未来実験室では、近い将来、生活で半導体がどのように使われていくかを体験してみましょう。

半導体の展示(陳秋文提供)

SDGs持続可能な発展を目指して、科学を学ぶ楽しさを知ろう

日常生活のなかで自然や科学に接して、科学を学ぶ楽しさを知ることができます。地下のコンピュータ教室にあるマルチメディア教室とロボット教育センターで、機械やロボットの模型を動かしてみましょう。3、4階では生命科学、自然科学に関する展示により、人類の進化や人間の身体、遺伝子の神秘などが学べます。5、6階には「力と運動」に関するさまざまな展示があり、ゲーム感覚で科学を体験できます。
半導体や人体の神秘といった最先端の科学が紹介されている一方で、植物や野生動物たちがこれまでどのように人間と共存してきたか、そして環境がますます厳しくなっていくなかで、それらと共存していくために、今、どのような問題があるかも展示で問いかけられています。自分たちの身の回りの問題と関連して考えてみましょう。
さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】日本の女性科学者の歴史について調べ、女性科学者がなぜ少ないのか、また増やすためにはどのような取り組みが必要か考えてみましょう。
  • 【現地体験学習】「透明ブリッジ-透明空橋」はどうやって作られたのでしょうか。この記事 の写真のように、ロビーから真上を見上げると、吹き抜けをつっきるように8階から9階へとかかっている「透明ブリッジ:THE MUSEUM BRIDGE」が目に飛び込んできます。これは、台湾で唯一、木材と鋼材で造られている橋で、環境に配慮して木材が多用されています。8階の「デザインの進化」と「博物館の探査のブリッジ」、9階の「木材の多様性の発見」では、橋のいろいろな特徴がまとめられています。また、7階では4か月にわたる橋の制作課程を7分の映像にまとめた動画を見ることができます。実際に橋を歩いて、いろいろ体感してみましょう。
  • 【現地体験学習】「空中自転車」にチャレンジしてみましょう。下にセーフティネットが張られているとはいえ、かなり高いところを綱渡りのようにして渡る「空中自転車」は、なかなか勇気がいることでしょう。でも大丈夫。てこの原理、だるまの重心、張力などを応用して設計されているからです。ぜひ科学的ロジックと面白さを体験してみましょう。
  • 【事前学習】【現地体験学習】 こちらのページ で開催中の特別展の内容がわかります。興味のあるテーマについて事前に調べ、現地で展示を見てみましょう。過去の特別展の内容はこちらのページ でわかります。以下のサイトで内容がわかるので、チェックしてみましょう
参考資料
国立台湾科学教育館については紹介動画(日本語)を見てみましょう。日本の科学におけるジェンダーギャップについては、横山広美「日本に数学や物理学を学ぶ女性が少ないのはなぜ? 理系進学の壁、独特の女性規範と能力ステレオタイプ」を読んでみましょう。幅広い理工系の分野については、NPO法人女子中高生理工系キャリアパスプロジェクト(GSTEM-CPP)が管理する「女子中高生 夏の学校(夏学)」を見てみましょう。社会と科学をつなぐサイエンスコミュニケーションについては、独立行政法人 国立科学博物館『科学を伝え、社会とつなぐ サイエンスコミュニケーションのはじめかた』(丸善出版、2017年)を読んでみましょう。

(陳秋文・阿部由理香)

公式ウェブサイト
公式ウェブサイト(中国語・英語)https://www.ntsec.gov.tw/
所在地
台北市士林区士商路189号

入館料:常設展3-6階
  大人100元;学生(証明書提示)70元
     空中自転車 
 大人80元;学生(証明書提示)50元
科学DIYイベント 100元
休館日:毎週月曜日(祝日、夏休み、冬休みは開館)