中正堂(台湾当代文化実験場提供)
C-LAB(台湾当代文化実験場提供)
臺灣當代文化實驗場
台湾当代文化実験場(Taiwan Contemporary Culture Lab,C-LAB)
旧空軍総司令部がアートと対話するスペースに
「文化実験エコシステム」の構築を目指すC-LABは、芸術、社会、技術の3つの主要な発展領域を中心に、アーティストと共同で異なる分野を横断する芸術と文化の実験を創り出す場です。
敷地内の建物は長い歴史を誇ります。かつては中華民国国防部空軍総司令部で、台湾空軍の軍事と空防の最高指揮機関でしたが、2018年に都心部の芸術と文化の交流の場へと変わりました。C-LABは、分野をまたがるさまざまな展示や公演、国際交流、映画、音楽イベント、教育講座、ワークショップ、マーケットなどを通じて、市民の生活に関わる、市民が参加できるアートスペースを提供しています。
学びのポイント
歴史と現代の芸術文化が交差する建物
C-LABは日本統治時代に、台湾最大級の科学研究施設「台湾総督府工業研究所」として建設されました。戦後は国民政府の空軍総司令部に変わり、事務室にあたる建物は、2015年、台北市の指定古跡(文化財)に指定されました。その周りには古跡の附属施設としての15の建造物があり、今ではさまざまな展示・上演スペースとして活用されています。例えば、中正堂展示スペース(旧中正堂)は、昔は軍隊のホールで、当時の軍隊の標語や憲法条文がそのまま残されています。現在は園内で唯一の高い天井を持つ建物であり、映画祭やアートフェスティバルの会場として利用され、有名な映画や映像作品が上映されます。観客は歴史の香りのするホールで大規模な芸術作品を鑑賞できます。正門付近にある衛兵詰所、当直長室と軍隊の防空壕は、通常は非公開ですが、市内の隠れスポットを公開する参加型プロジェクト「Open House Taipei(打開台北)」とのコラボで、2020年以降に何度か公開されました。
領域・形式を横断する現代アートの展示
C-LAB内のあらゆる場所に、多様な素材で作られた、分野を横断する現代アートが配置されています。戦況棟(旧戦情大楼)前の広場、連合食堂アートスペース(旧連合餐庁)、通信分隊アートスペース(旧通信分隊)、図書館アートスペース(旧中山堂)、米国援助棟(旧美援大楼)など、多くの歴史的建造物が活用されており、観客は自由に見学ルートを選べます。
2023年6月に開催された展覧会「崩壊した記憶の宮殿」(崩塌記憶之宮、Memory Palace in Ruins)がその一例です。テキスト、ビデオ、インスタレーション、彫刻、写真、音声など、さまざまな形式で創作された作品が、園内のあちこちにある建物に配置されました。観客はそれぞれの建物の空間を感じながら作品を体験し、現代の生活に歴史の記憶の痕跡がどのように残されているかを考えさせられます。
2023年6月に開催された展覧会「崩壊した記憶の宮殿」(崩塌記憶之宮、Memory Palace in Ruins)がその一例です。テキスト、ビデオ、インスタレーション、彫刻、写真、音声など、さまざまな形式で創作された作品が、園内のあちこちにある建物に配置されました。観客はそれぞれの建物の空間を感じながら作品を体験し、現代の生活に歴史の記憶の痕跡がどのように残されているかを考えさせられます。
『崩壊した記憶の宮殿』展示の様子(丁才軒撮影)
地域の文化とのつながり実験
C-LABは、講座、ワークショップ、地域のガイドツアーなどを通じて、地域の文化と市民をつなぐ試みをしています。「CREATORS」という作家/研究者支援プログラムを通じて、優れたクリエイターの育成に取り組み、異なる地域文化を持つコミュニティや地域間のコラボを促進し、イノベーションの拠点にします。また、毎年期間限定でアーティストによるオープンスタジオが開催されます。2023年には、台湾最東端の漁村である「馬崗漁村(Magang Fishing Village)」を食生活で表現するワークショップなど通じて台湾の豊かな特産品を紹介する、また、歴史的建造物の外観をモチーフとした台湾の伝統菓子「蒸しカステラ」を通じて文化財保存の課題に触れるといった、地元に根差した3チームの作家の創作プロジェクトが紹介されました。
2023年「CREATORS」プロジェクト(台湾当代文化実験場提供)
さらに学びを深めよう
- 1 【事前学習】【事後学習】C-LABと同じように、日本にある市民参加型のアートスペースについて調べ、比較してみましょう。
- 2 【現地体験学習】【事後学習】歴史的な建物を生かしたC-LABの展示スペースで、映画作品やアート作品を展示するとしたら、どのような作品を展示するか、その理由とともに考えてみましょう。
参考資料
文化創意産業については、新井一二三著『台湾物語:「麗しの島」の過去・現在・未来』(筑摩書房、2019年)の「文化創意ブーム」を参考にしてみましょう。文創ムーブメント牽引してきたクリエーターたちが文創を語った小路輔『TAIWAN EYES GUIDE FOR 台湾文創』(トゥーヴァージンズ、2020年)、小路輔『TAIWAN FACE Guide for 台湾文創』(トゥーヴァージンズ、2018年)を読むと、台湾カルチャーの今とこれからを知り、感じることができるでしょう。
- 公式ウェブサイト
- https://clab.org.tw/(中国語) https://clab.org.tw/en/(英語)
- 所在地
- 10655 台北市大安区建国南路一段177号 No. 177, Sec. 1, Jianguo S. Rd., Da’an Dist., Taipei City 10655 , Taiwan (R.O.C.)