清華大学外観(国立清華大学提供)

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國立清華大學

国立清華大学

台湾のハイテク産業を支える先端研究大学

TSMCをはじめとするハイテク企業が集積し、台湾のシリコンバレーと呼ばれる新竹には、各分野の産業を支える人材を輩出する研究型大学が二つあります。その一つが国立清華大学です。国立清華大学は12カレッジ(学部に相当)、36科、40学院研究科、研究センターのほか、1956年設立の原子科学研究所を擁する、台湾を代表する研究型の大学で、理学や工学、原子科学、テクノロジー管理および人文社会等、多岐にわたる研究の拠点となっています。新竹教育大学との合併により、芸術学、教育学も学べるようになりました。近年、医学も発展し、特に脳神経科学は分子生物学者のジェームズ・デューイ・ワトソンから世界の先駆的研究だとして賞賛されました。人文社会学の分野でも地域の人々と協力しながら、持続可能な発展に取り込んでいます。

学びのポイント

日本時代の軍事消防池から戦後の成功湖へ

清華大学のキャンパスは、もともと日本時代に帝国海軍が飛行機部隊の燃料を生産していた第6燃料工場でした。1943年に建てられた第6燃料工場では、戦局の激化にともない、蔗糖、糖蜜などからエタノールを抽出して、神風特攻機の航空燃料の代用とするアルコール燃料も生産していました。そのため、戦時中は、アメリカ軍が大量の爆弾を投下し、多くの人々が亡くなりました。今でも当時の燃料工場の建物が一部残り、歴史的建造物に登録されています。キャンパス内の緑の草原に囲まれた成功湖は、かつて海軍の消防用水槽でしたが、戦後はボートにも乗れる普通の湖となり、授業の屋外教室として使われるほか、学生たちのデートスポットにもなっています。

成功湖(国立清華大学提供)

研究学園都市とは

新竹には、国立清華大学、国立陽明交通大学、新竹サイエンスパーク科学園区があり、研究学園都市を形成しています。1955年、中華民国とアメリカは、原子力の平和的利用における協定を締結し、台湾に原子炉を建設する計画を立てました。当時の新竹は土地が安く、人口も少なかったため、清華大学の研究という名目で原子炉が建てられました。原子力の研究だけではなく電子学の研究も必要とされ、交通大学(現:国立陽明交通大学)も設立されました。両大学は互いに協力し、研究発展していきます。その後、1980年に新竹サイエンスパーク科学園区が設置されると、両大学はそのサイエンスパーク園区に多くの人材を輩出しました。やがて園区と大学の一体化が進み、研究学園都市が形づくられたのです。

学問の自由のキャンパスを守る─独立台湾会案

清華大学には学問と言論の自由を尊重する校風があります。1991年5月9日、独立台湾会事件が起こりました。早朝から、法務部調査局(捜査機関)が、学校に通告なく突然キャンパスに立入り、歴史研究所の院生である廖偉程を逮捕、同日、郷土史家の陳正然、社会運動家の王秀惠、および宣教師のMasao Nikar(中国語名:林銀福)も逮捕しました。その理由は彼らが史明の『台湾人四百年史』を読み、日本にいる史明を訪問し、独立台湾会(史明が設立した組織)の宣伝を行ったというものでした。この事件は反乱鎮定動員時期臨時条項が廃止されてから起こったため、台湾社会と大学から激しい抗議の声が上がりました。清華大学の学生たちは調査局の前に座り込み、抗議活動を行いました。5月15日には、台湾全土で大学生が授業をボイコットして台北駅に集結し、「刑法100条、懲治反乱条例の廃止を求め、政治的迫害に反対する」と主張し、言論と学問の自由が法的にも守られるよう訴えました。この事件の後、台湾の歴史を研究するサークルが増えました。2015年には、この事件を描いたドキュメンタリー映画『末代叛亂犯』が公開されています。
さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】台湾の各大学の歴史と特徴を調べてみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】清華大学のウェブサイト SDGs in NTHU - 清華永續 17執行 | 清華SDGsを見て、清華大学が取り組んでいる環境に関連するSDGsの計画を調べてみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】 清華大学を紹介する数位校史館(中国語版・英語版)を閲覧し、清華大学の歴史について調べてみましょう。
参考資料
原子力に興味深い場合は日本原子力学会から出版した日本原子力学会誌を参照できます。
台湾の大学については、赤松美和子・若松大祐編『台湾を知るための72章【第2版】』(明石書店、2022年)所収の山﨑直也「第39章 大学――狭き門から大衆化の時代へ」に詳しい説明があります。独立台湾会および独立台湾会事件については、田中淳『理想はいつだって煌めいて、敗北はどこか懐かしい:100歳の台湾人革命家・史明 自伝』(講談社、2018 年)を読んでみましょう。
独立台湾会事件に関する映像作品として、廖建華監督のドキュメンタリー映画『末代叛乱犯』(中国語版)とドラマの『国際橋牌社(アイランド・ネーション)』(中国語版)も参考になります。国際橋牌社(アイランド・ネーション) 日本版ティーザー予告編 - YouTubeでは独立台湾事件の場面も描かれています。

(呂函螢)

ウェブサイト
中国語・英語https://www.nthu.edu.tw/ 
所在地
新竹市光復路二段10号