栖来ひかり氏提供

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小紅厝月經博物館

月経博物館

アジア初の「月経」をテーマにした博物館

月経博物館は、アジアで初めて、そして現在は世界で唯一の「月経」がテーマの博物館です。運営は、2019年創設で、「生理の貧困」「生理の不平等」「生理の汚名化」といった問題に取り組む台湾のNPO法人「小紅帽(=赤ずきん) With Red」がしており、2022年夏にオープンしました。「生理はあたりまえの出来事」という考えのもと、女性の身体や月経の仕組み、月経への偏見や思い込み、月経の教育や教材について展示しています。若いアーティストによるジェンダーをテーマにした展覧の場になっているほか、月経をモチーフにしたイヤリングなどの販売もしています。参観者の4割は男性であり、運営メンバーにも男性がいます。

学びのポイント

Z世代が立ち上げた博物館

小紅帽立ち上げの中心人物、ヴィヴィ・リン(林薇、Vivi Lin)は、台湾のいわゆるZ世代の女性です。彼女は、台湾をはじめとする東アジアで生理にまつわるイシューが無視・軽視されてきたことに強い問題意識をもち、アクティビストとして活動を始めました。2021年には、イギリスの故・ダイアナ妃が設立し世界をよりよい場所に変えようと人道的活動・社会貢献する次世代リーダーに贈られる「ダイアナ・アワード(Diana Awards)」を受賞しました。

ヴィヴィ・リン氏(栖来ひかり氏提供)

生理をあたりまえにする学びの場

月経博物館は、大龍峒保安宮という有名な寺廟の裏手にあります。伝統市場(朝夕に立つ食材などを販売する市場)があるような生活感あふれる空間に、月経をテーマとする博物館を開いたのは、この博物館が市場に買い物に行くぐらい日常的な場所になってほしいという願いが込められているからです。
館内には、生理の仕組み、台湾における生理の貧困、各種生理用品の歴史と使い方、小紅帽が開発した月経教育の教材などが展示されています。小紅帽は、博物館運営のほか、自治体や学校への生理用品の贈呈、教員向けの月経に関する指導法のレクチャーもしています。また、3世代にわたる女性に聞き取りした書籍の刊行や、月経への理解を深めるワークショップ、大学での月経に関する講座も実施しています。
 
さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】日本や世界で生理の問題についてどのような取り組みが行われているか調べましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】生理に関する取り組みのほか、台湾ではどのようなジェンダー問題への取り組みが行われているか、調べてみましょう。
参考資料
月経博物館の創設者であるヴィヴィ・リンについては、栖来ひかり「世界唯一の「月経博物館」が台湾にできた理由」 (『東洋経済』2023年1月25日)のインタビューがあります。
片倉真理「台湾初、「月経」がテーマの博物館〈小紅月經博物館〉」(『BRUTUS』2022年12月20日)は、月経博物館を三つのポイントからわかりやすく紹介しています。
田中美帆「台湾に登場した世界で唯一の月経博物館(1) 若者の訴える「月経の公平」とは?」(『Yahoo! JAPAN NEWS』2023年4月24日)、田中美帆「台湾に登場した世界で唯一の月経博物館(2) 若者のめざす「月経の公平」を追う」(『Yahoo! JAPAN NEWS』2023年4月25日)は、小紅帽が展開する月経の公平に向けた取り組み、月経博物館に携わるZ世代の考えについても知ることができます。
日本の生理をめぐる状況については、「NHKシチズンラボ」の特集ページで知ることができます。

(栖来ひかり)

ウェブサイト
公式インスタグラムhttps://www.instagram.com/period.withred
所在地
台北市大同区重慶北路三段335巷40号
アクセス:MRT淡水線・円山駅から徒歩10分