蔡蕙頻撮影
國家圖書館
国家図書館
台湾の出版物をまるごと保存するナショナル・ライブラリー
国家図書館は国が運営する図書館で、台北市の中正紀念堂の向かいに位置します。国立台湾図書館(新北市)と国立公共資訊図書館(台中市)とともに、台湾に3館ある国立図書館のひとつです。
国家図書館は、もともと1928年に中国の南京に設立されました。当初の館名は国立中央図書館で、明・清代の文献のコレクションを特色としていました。当時は戦争の最中で、国立中央図書館の蔵書もやむを得ず中国大陸を転々とし、1948年に台湾まで運ばれました。台湾移転後は、収蔵する建物がなかったことから、台湾大学医学部の講堂や日本統治期の旧建功神社の建物を図書館として利用していました。1986年に中山南路に位置する現在の本館が竣工し、9月には正式に業務が始まりました。1996年には現在の国家図書館に改称されました。そして、現在は南部の台南市に南部分館を建設中です。
国家図書館は明・清代の文献を特別コレクションとして収蔵しているほか、「図書館法」により、納本制度も行われています。なお、全国の修士・博士論文も「学位授予法」によって国家図書館に保存されおり、この図書館は戦後台湾の出版物を全面的に集めていることになります。
学びのポイント
南京に建てられた国家図書館がなぜ台湾に?
中華民国臨時政府は1912年に南京で成立しました。当時、図書館事業を含む社会教育を管轄する教育部(日本の文部科学省に相当)は、最高レベルの学術文化の蔵書機関として、また全国各地の図書館を統括する機関として、首都南京に国立中央図書館を設置しました。しかし、日中戦争やその後の中国共産党と中国国民党の内戦により、国立中央図書館も中国国民党とともに各地を転々とし、1948年には海峡を越えて台湾まで移りました。
国家図書館の蔵書はなぜ貸出禁止なの?
国家図書館は日本の国立国会図書館と同様に法定納本図書館です。その成立の目的は、出版物を文化的遺産として長期的に保存し、後世に継承することにあるため、蔵書の貸し出しは行っていません。さらに、利用者の年齢にも制限を設けています。
南部分館の役割
図書館の蔵書が増えれば増えるほど、スペース不足の問題が生じます。そのため、国家図書館は2018年に南部の台南市新営区に南部分館の建設を始めました。南部分館はデジタル資料と児童及び青少年(ティーンエイジャー)向けの資料の保存を目的としています。
さらに学びを深めよう
- 【事前学習】日本の国会図書館の役割を調べて、台湾の国家図書館と比べてみましょう。
- 【事前学習】「納本制度」とは何かを調べましょう。
- 【事後学習】日中戦争から国共内戦の間、国立故宮博物院や国家図書館の収蔵物がどのように移動したか調べてみましょう。
参考資料
国家図書館を紹介する日本語の書籍はなさそうですが、東京大学附属図書館アジア研究図書館上廣倫理財団寄付研究部門によって書かれたコラム「【世界の図書館から】国家図書館(台湾)」、概要を把握できます。なお、論文としては、宇治郷毅「台湾の図書館探訪 : 国家図書館、台北市立図書館を中心に」(『同志社大学図書館学年報』34号、2008年7月)も国家図書館の概要をわかりやすく紹介します。
- ウェブサイト
- 公式
https://www.ncl.edu.tw/
(中国語・英語)
- 所在地
- 台北市中正区中山南路20号