松葉隼撮影

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中央研究院

中央研究院

自然に囲まれた台湾最高の学術研究機関

中央研究院は、台北市南港区にある総統府直属の最高学術研究機関です。数理科学、生命科学、人文社会科学の3つの領域にわたって、24の研究所と7つの研究センター、約1000人の研究員を擁し、台湾最高レベルの研究を行っています。また中央研究院には、一般公開されている博物館が複数あり、気軽に見学することができます。なかでも歴史文物陳列館は、古代の貴重な遺産を中心に収蔵、展示しており、台湾における国宝収蔵数第2位を誇ります。

学びのポイント

総統府直属の最高学術研究機関

中央研究院は、総統府に直属する、国立の最高学術研究機関です。こうした機関は国立(または国家)アカデミーと呼ばれ、国の支援を受けて学術研究を行うとともに、研究水準向上や標準化を行っています。2017年時点で、合計で977人の研究員が所属し、「院士」と呼ばれる研究フェローが276人所属しています。院士は終身名誉職であり、台湾学術界の最高権威とされています。中央研究院は、台北市南港区に本部や主たる研究所を設置しているほか、現在台南市で建設が進められている南部院区、経済部(日本の経済産業省に相当)、衛生福利部(日本の厚生労働省に相当)、国家科学及技術委員会(日本の旧科学技術庁に相当)と共同で運営する国家生技研究園区(南港・中央研究院に隣接)など、多くの研究拠点を有しています。

台湾第二の「国宝」所蔵機関

 「台湾最高の学術研究機関」と言えば、堅苦しい、物々しい研究機関で、一般の人には関わりがない場所のようにも感じられますが、実際には少し違います。南港の自然豊かな研究院は、地域住民の散歩やランニングのコースになっており、公園代わりに憩いの場とする人も少なくありません。意外に知られていませんが、中央研究院には気軽に見学できる場所がいくつかあります。代表的なものに、歴史文物陳列館と民族学研究所博物館、そして胡適紀念館があります。歴史文物陳列館は、その名の通り歴史に関連する史料や考古学的資料、金属器や陶磁器などさまざまなものが収蔵、展示されています。民族学研究所博物館は、主に民族学的資料を収集しており、その収集範囲は台湾だけでなく、中国や東南アジア、オセアニアなど世界各地に広がっています。近年では、台湾国内の先住民族への意識の変化から、関連する展示が多く実施されています。胡適紀念館は、中国の思想家、教育者である胡適に関する資料館です。この他にも、近代中国画を収集、展示する嶺南美術館や各研究所などに付属する展示館や展示室もあります。台湾国内で最も多くの国宝を所蔵しているのは故宮博物院ですが、歴史文物陳列館にはそれに次ぐ数の国宝が収蔵されています。
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赤松美和子撮影

歴史をつなぐ場所

 中央研究院にはAcademia Sinicaというラテン語表記の名称もあります。このうち、Sinicaは「中国の」を意味し、直訳すれば「Academia Sinica」は「中国のアカデミー」となります。そのため、名称の是非をめぐって議論がありますが、台湾の最高学術機関であるにもかかわらず、このような名称となったのは、同機関が戦前に中国大陸で設立されたためです。1927年、中国国民党中央政治会議で国家研究機関の設立が提案され、同年中には中央研究院組織法が制定、1928年に独立組織として成立、初代院長には元・北京大学学長で思想家の蔡元培が就任しました。おおよそ1930年までに、物理、化学、地質、天文、気象など自然科学系の研究所と、社会、語言歴史研究所など人文社会科学系の研究所が設立されました。このように、中国で設立された中央研究院でしたが、日中戦争と国共内戦の影響を大きく受けます。1949年の中華民国政府の台湾移転後、中央研究院院長に就任した朱家驊が台湾での中央研究院再設置に奔走、1954年には現在の南港で新しい中央研究院の建設が始まります。以来70年近くにわたって、中央研究院は台湾の最高学術研究機関として拡大を続けてきました。自然科学は言うに及ばず、人文社会科学においても中央研究院の台湾社会への影響力は大きく、台湾の学術研究をリードし、未来へと歴史をつなぐ場として期待されています。

赤松美和子撮影

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】台湾出身でノーベル賞を受賞した人物について調べてみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】中央研究院の設立に関わった蔡元培や胡適について調べてみましょう。
  • 【現地体験学習】中央研究院歴史文物陳列館や民族学研究所博物館を見学してみましょう。どのような資料が展示されていますか。
参考資料
中央研究院の最近の動向については「開かれた時代へ 新たなスタート 中央研究院90周年」(蘇俐穎執筆、台湾光華雑誌) (2019年1月)をご覧ください。 公式サイトでは、中央研究院についての電子パンフレット(中国語版・英語版)を閲覧できます。また、You Tubeの中央研究院のチャンネルには、中央研究院のプロモーションビデオなどがアップロードされています(中国語・英語)。中央研究院台湾史研究所には、日本語版ウェブサイトも用意されています。

(松葉隼)

ウェブサイト
公式 https://www.sinica.edu.tw/en

(英語)

所在地
台北市南港区研究院路二段128号