街遊 Hidden Taipei 台北街歩き(Hidden Taipei)

歴史的な地区を深く知る

300年ほどの歴史を持つ龍山寺を中心とする台北市萬華地区は、清朝時代から港町として栄えてきましたが、一方で出稼ぎ港湾労働者の多い貧困地区でもあります。現在も龍山寺は毎日多くの観光客で賑わいますが、その向かいに広がる「艋舺公園」は夜になると市内最大の路上生活者の寝床になります。2011年11月、龍山寺地区でホームレス支援を通してまちづくりに取り組む地域団体「台湾芒草心慈善協会」が誕生しました。以来、ユニークな事業を展開していますが、その一つが「台北街歩き」(Hidden Taipei)です。これは、路上生活経験者が街ガイドの訓練を受け、彼らの視点から台北の街案内をするものです。(④から⑥までは、蕭閎偉・城所哲夫・瀬田史彦「台北市竜山寺地区における住民と地域の自立の関係性を実現するまちづくり」を参照しています)

学びのポイント

「台北街歩き」のガイドさんは普通の観光ガイドとどう違うの?

萬華地区には古刹である龍山寺や歴史的建造物を保存した剥皮寮歴史街区があり、台北市の代表的な観光地として知られています。ただ、多くの観光客は通り一遍の物見遊山にとどまり、この地域を深く知る機会はありません。「台北街歩き」では、この地域の二面性について知ってもらう工夫がなされ、ガイド自身の人生についても語ってもらいます。ガイドは、年齢、職業、社会階層の異なる多くの人と交流することによって、生きる自信を回復します。また、有料のガイドツアーであるため、参加費の60%がガイドの収入となり、経済的自立も可能になります。残りの40%は、設備費、保険料、芒草心慈善協会職員の給与やボランティアへの交通費、さらに新しいガイドの養成訓練などの費用にしています。

台湾芒草心慈善協会についてもっと教えて

ホームレス支援の現場で経験を積んだソーシャルワーカーによって、2011年に設立されました。以来、アジア各地の組織と交流を図りつつ、各国の経験を学び、台北の支援現場で革新的な支援モデルの構築に取り組んでいます。2013年には路上生活経験者のために自立支援センター「三水楼」を立ち上げ、就労事業を始めました。路上生活経験者には建築労働の経験を持つ人が多いことに着目し、2016年には「工務店事業」を始め、地域の貧困家庭のために、ペンキ塗装、電気工事、左官、空調設備設置、清掃、解体などの仕事を請け負っています。また、地域住民との交流事業として「ご飯食べた?地域の食卓」というイベントがあり、三水楼で定期的に自立支援センターの退所者と芒草心慈善協会の職員、ボランティア、地域住民、商店街の人々が一緒に食事しています。さらに、啓発活動として「路上生活体験キャンプ」を行い、参加者は100元の交通カード、リュックサック、寝袋、洗面用具、箸、椀だけを用意して、二泊三日を路上で過ごします(2020年7月現在)。

さらに学びを深めよう

  1. 【事前学習】【事後学習】台湾の貧困問題について調べてみましょう。
  2. 【事前学習】【事後学習】台湾ではどのような貧困支援がなされているか調べてみましょう。
  3. 【事前学習】【事後学習】福祉の観点からの「まちづくり」について調べてみましょう。

参考資料

台北街歩きの動画を見てみましょう。街歩きを含む、龍山寺周辺のまちづくりについては、蕭閎偉・城所哲夫・瀬田史彦「台北市竜山寺地区における住民と地域の自立の関係性を実現するまちづくり」(『公益社団法人 日本都市計画学会 都市計画論文集』、Vol.52 No.3、2017年10月)に詳しい紹介があります。より包括的な理解には、台湾のホームレスとホームレス支援に関わるソーシャルワーカーのオーラルヒストリーをまとめた李文萱著・橋本恭子訳『家なき者』(白水社、近刊)がおすすめです。

(橋本恭子)

ウェブサイト
社団法人台湾芒草心慈善協会 https://www.homelesstaiwan.org
所在地
台北市萬華区雅江街50号一楼
特記事項
有料のガイドツアーで、参加希望者はオンラインでの事前申し込みが必要です。 学生は一人400元、大人は450元です。 団体予約の場合は、6人から受付可能です。