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松山療養所所長宿舎

松山療養所所長宿舎

廃屋の日式建築をリノベーションしたカフェ

2020年、ガジュマルの巨木の木陰に、瓦屋根と南京下見板が映える木造建築のおしゃれなカフェがオープンしました。1935年頃に建てられた宿舎(公務員住宅)を修理して再生したリノベーション建築のひとつです。 日本統治時代に、日本人が関与して建設された建物のことを「日式建築」と呼びます。この宿舎も1935(昭和10)年頃に建てられた日式建築で、近くに開設された結核療養所(サナトリウム)の所長の家として建てられたものでした。廃虚のように荒れ果てていましたが、台北市が文化財として保存することを決定、2018年から全面的な修理がスタートしました。外観は当初の姿に復原され、内部はレストラン「靜心苑」として人気のスポットになっています。

学びのポイント

どうして建てた年がわかるの?

この建物は官営の施設として使われてきたので来歴を示す書類が残っていたようです。でも、物的な証拠があるとその年代特定は確実になります。実は私が2016年に屋根裏に上って調査をしたところ、「上棟式 昭和拾年(1935年)拾貮月貮日」と墨書された棒を見つけました。5cm角で長さ3.8mの幣串と呼ばれる祭事の道具で、柱や梁を組み上げる日である「上棟」の日がこれで確定されました。竣工はおそらく翌年であったことでしょう。このように、幣串や棟札(ホームベース 形の板に年月日や大工の名前などを墨書したもの)を屋根裏に「隠しておく」ケースがあり、それは火事や台風などから家を守ってほしいという祈りを込めた証でもあるのです。

2016年(渡邉義孝撮影)

「上棟式 昭和拾年(1935年)拾貮月貮日」と墨書された幣串(へいぐし:棒状の木材で墨書がなされたもの)(渡邉義孝撮影)

2016年屋根裏(渡邉義孝撮影)

建物の特徴は?

まず外観から。修復された屋根は日本らしい和瓦葺き。形は寄棟と切妻をミックスした形状です。ボディの部分は板が横向きに何段にも重ねて張ってあります。これは南京下見板と呼ばれ、洋館によく見られるデザインで、雨が建物内に入らないように工夫したものです。玄関の両脇にはギリシア風の八角柱が並び、基壇とともに格式の高さを表します。可愛らしい丸窓や六角窓、そして出窓が、外観をチャーミングに彩っています。洋風の外観に対して、内部には床の間を備えた畳の和室がありました(現在は板張りのレストランに改装)。古い建物の魅力をできるだけ残しつつ、清潔で快適な空間につくり替え、台湾の薬膳料理などヘルシーなランチを楽しめる空間になりました。

(渡邉義孝・画)

2016年(渡邉義孝撮影)

リノベーション後(靜心苑提供)

さらに学びを深めよう
  • 【事前学習】【事後学習】台北市内には、この他にも再生された日式建築がたくさんあります。探してみましょう。
  • 【事前学習】【事後学習】日本統治時代に、総督府はなぜこの地に結核療養所を造ったのでしょうか?
  • 【現地体験学習】このような建物を「日式建築」と呼びますが、日本にある木造住宅とは違う部分もあります。煉瓦の基礎や窓に注目し、台湾の気候やシロアリの問題と関連してその理由を考えてみよう。
参考資料
台湾の近代化遺産の活用や建築のリノベーションについては、東京文化財研究所「台湾における近代化遺産 活用の最前線」(2020年)を読んでみましょう。1938年に書かれた論文ですが、小田俊郎「臺灣潜ニ於ケル結核ノ地理病理學的觀察」『結核』第16巻第12号を読むと、当時の台湾における結核について知ることができます。

(渡邉義孝)

ウェブサイト
公式 https://jinghsinyuan.com.tw/about/

(中国語)

所在地
台北市昆陽街164号